75抗日戦争の最近のブログ記事

ナツコ 沖縄密貿易の女王
奥野修司
2005年4月 文芸春秋
2007年10月文春文庫
太平洋戦争後の混乱時、アメリカ統治下だった沖縄。最西端の与那国島は、台湾との密貿易で栄えていた。
戦争の被害が大きく物資が不足していた沖縄へ台湾から大量の闇物資が運ばれていた。沖縄からは日本本土へ。南国の食品、砂糖や米、ペニシリンなどの医薬品など。
香港やマニラで買い付けられた商品は、中国商人と台湾やマニラ在住の沖縄人の人の手で台湾を経由して与那国島に運び込まれた。 与那国でもまれにアメリカ軍や琉球政府官憲による摘発も有ったのだが、一大勢力を誇った闇勢力を抑えることは出来なかった。
戦争の被害で何もかもない沖縄、そして日本本土。物はなんでもかんでも売れた。支払は現金が無ければ、戦争に使用された砲弾、鉄くず。
与那国島の港には次々と物資が運び込まれる。小さな島には日本各地から運び込まれた現金があふれた。島の人々は札束を持って歩くようになった。比喩ではなく本当に。島の中学生が学校を終えて荷揚げのアルバイトを数時間するだけで、当時の日本人の平均月収以上の収入を得た。島には次々と家が建ち人口が膨れ上がったのだが、その隆盛は戦後数年の混乱が終わると無くなった。

当時のこの状況を実際に経験した人はもう少ない。"密貿易"だけにその事実を記録する文書や写真も少ない。でもその事実まで誰の記憶からも消えてしまうとは...もったいない。面白い話なのに。
潜行三千里」 辻政信
2010年1月20日
毎日ワンズ
原著;昭和25年 毎日新聞社
南京の真実
The Diary of John Rabe

ジョン・ラーベ著
1997年10月9日
講談社
「チャイナ・オデッセイ」
[ TO THE STORM
The Odyssey of a Revolutionary Chinese Woman]
楽熏雲(ユエ・ダイユン)/C.ウェイクマン=著
丸山昇=訳

ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記
ウルスラ・ベーコン/著
和田まゆ子/訳
祥伝社/2007年11月18日

ドイツで裕福な暮らしをしていたユダヤ人一家。著者の父親がある日突然警察に連行された事から話が始る。
国外に行く事を条件に父親を引き取り、イタリアから上海行きの船に乗るためにドイツを出国。財産の国外持ち出しが出来ないために、持てる限りの日用品を持ち出発。次々とユダヤ人迫害の政策が出される中の移動、現金資産を海外に持ち出せない為に、莫大なお金で船のチケットを入手したので船の中では落ち着いた日々を過ごせたが、上海で船を下りた時点から始る過酷な生活は、読んでいてかなり興味深い。14歳の女の子が体験する様々な出来事。

当時の上海の様子の描写が、ヨーロッパ人少女の目で、飾らず書かれている。アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・中国国民党・謎の団体など様々な権力の下で起こる様々な事件。他人事ではなく一少女に直接降りかかる災難を、父親の才覚・偶然に知り合う他の避難民・家族を世話する中国人召使(?)・ビジネスパートナー・闇組織の首領(?)・その愛人達など謎の中国人などに助けられて、又は自分の機転を利かせて乗り越えていく。

9年間の上海での亡命(無国籍になったので亡命すら出来ないのだが)生活の記録。彼女の日本人と中国人に対する描写が面白い。

部屋を借りるため、中国人の大家の部屋で賃貸契約書にサインをするのだが、その時に起こる想定外の事件(?)の箇所の描写が特に面白い。こんな事が有るのかと唸らされる。



ユダヤ人の悲劇、具体的な事件を自分の言葉で書いていて「アンネの日記」よりも興味深く読めた。

戦争が終わってから彼女はアメリカ国籍を取得し、上海で支えあった人達とアメリカで新生活を始めるのだが、このような人達がアメリカの繁栄を支えているのだと思うと、色々と考えさせられる。

著者の父親は避難民の立場で上海で事業を興す(さすがユダヤ人...)。そのおかげで家族は生き延びる事が出来たのだが、彼は上海での日々で何度か「まさかこんな事になるなら予め手を打っておいたらよかった。お金さえ予め海外の銀行に預けておけば...」と述べる。 現代の日本人がこのような境遇(無国籍になり避難民生活を送る)と言う事になる事は、可能性が全くないと言えるだろうか。また大地震が日本で起こり、大都市や原発が直接被害を受けたらもしや...と考えた。
上海時間旅行
―蘇る"オールド上海"の記憶

佐野眞一 他
山川出版社
2010年7月20日

山川が旅行ガイド(?)を出すとこうなるのか!といった感じ。さすが。
幕末の武士から芥川龍之介、李香蘭、記録の残っていない労働者まで、戦前の日本人を魅了した上海を、複数の日本人の視点から紹介する。

それにしても上海にはまだこんなに歴史遺産が残っているんだと驚く。これから数年でほとんど消えるような気もするけど。



*私と「上海」 上海育ちが語る我が青春の"オールド上海" 
*「筆紙をもってつくすべからず」幕末の志士も驚嘆した上海
*文士達の感性が捉えた「上海」の風貌
*[コラム]上海蟹は風流な食べ物 
*「中国のハリウッド」を疾走した川喜多長政と李香蘭 
*数々の日中人間ドラマを生んだサロン「内山書店」 
*[コラム]「上海」はどう描かれてきたか 
*日本海海戦を勝利に導いた 三井物産上海支店長「山本条太郎」一代記 
*それからの阿Qたち―2010年「在上海読書日録」より― 
*上海に行くなら"浴地"へどうぞ
*上海の夜と霧―『阿片王・里見甫』を振り返って 
*20世紀最大のスパイ事件「ゾルゲ」上海へ潜行す
*上海の夜に羽ばたいた悲劇の王女「川島芳子」 
*南進論の入り口は上海だった
*上海娯楽の象徴だった大世界
*私と「上海」 一家三代の上海百年物語
「落陽の市街図~青春への北帰行」
宇田博/著
1990年10月25日
六法出版社

満州で学生時代を過ごした日本人が、40年ぶりに中国東北部を旅をする。
終戦後の混乱時の人間関係/裏切り・友情が蘇ってくる。真実は~。
阿片王 満州の夜と霧
佐野眞一
2005/7/28
新潮社

中国史の目撃者」毛沢東から鄧小平まで
ジョン・ロードリック/著、山田耕介/訳
1994年7月14日
TBSブリタニカ

"COVERING CHINA" by John Roderick

~ロドリックさん、あなたがドアを開けました。
1971年4月12日 周恩来

語学の才と機知を認められて、アメリカの諜報要員として徴兵された地方新聞記者青年。インドを経て重慶政府付として第二次世界大戦末期に四川省に向かう。戦後はAP通信特派員として中国共産党の取材に当たる。長征にも同行し、延安での中国共産党埋伏時代も経験した唯一の外国人記者となったために、毛沢東を始めとする革命第一世代と個人的な繋がりを持つ貴重な経験を得る。当時の描写部分がこの本で最も盛り上がる部分だ。
文化大革命時代は入国できなかったために、日本で中国の定点観測を行うのだが、文革前の経験が有る為に適切な判断をすることが出来ている。中国とアメリカが再び外交を結ぶきっかけとなるピンポン外交も同行するなど、非常に稀有な経験をしている。
89年の天安門事変での鄧小平の学生弾圧の判断について批難はしているが、鄧小平のその決断については予め予測していたようだ。

この本を読み、中国共産党のこれまでの経緯について評価はしなくてはいけない。毛沢東と鄧小平の業績はやはり大きい。ただ、彼(著者)も何度も悔しさ(?)を交えて書いているが、毛沢東と鄧小平の"変わり身"が残念でならない。
「日中戦争見聞記
-1939年のアジア-」


コリン・ロス著
金森誠也+安藤勉訳
1990年4月10日 新人物往来社
Colin Roβ "Das Neue Asien (NEW ASIA)" 1940Leipzig

オーストリア人(旅行中にオーストリアはドイツに併合されたので"ドイツ人"になる)の新聞記者の取材旅行記。

第二次世界大戦直前の、国際情勢が風雲急を遂げる時代。客観的な視点で書かれた"旅行記"で、非常に面白い。

中立国籍・日本の同盟国人(ドイツ人)・ヨーロッパ人、と立場を使い分けて旅をする。アメリカにも日本にも満州にも、共産党支配地域も、国民党支配地域も、イギリスやフランスの租界と移動する様は面白い。

旅のルートは、アメリカからの船で横浜で日本入国。東京・江ノ島を観光後、自らベンツを運転し広島へ。下関からフェリーに乗り釜山。ソウルを経て鉄道で満州国へ。鞍山、新京、開拓団入植地、ハルピン。外蒙古でモンゴル王の徳王と謁見後、日本軍占領下の華北へ。北京、天津、上海、香港と中国を鉄道などで縦断。車でハイフォン・ハノイへ。ハノイから民間航空機で昆明、中華民国(国民党政府)の首都の重慶へ、というもの。その後運城から成都に向かう途中で終わっている。

書ききれない多くのエピソード。
関東大震災で瓦礫の山になった横浜。出征兵士を送る賑やかな行列の後に来る、戦死した兵士の葬列。車で日本横断中の村々での様子。日本統治下の朝鮮。満蒙開拓団との対話。近代化が図られている途上の満州。日本とロシアの間で揺れ動くモンゴル。清が滅びた後の混沌とした北京。北京・天津・上海での欧米諸国の租界の様子。近未来に来襲する日本軍に怯える香港のイギリス人。日本軍戦闘機に襲われるフライト。空襲下の重慶での生活...

今となっては貴重な、多くの人との対話。
阿南陸軍大臣、星野満州国総務長官、満蒙開拓団、ハルピンの亡命ロシア人、徳王(モンゴルの王、日本軍の傀儡政府のお飾り)、華北進駐の日本軍兵士。重慶に住むのドイツ人(ドイツは日本の同盟国だが、中華民国に宣戦布告したわけではない)、中国国民党員などなど。

訪日前に彼は南北アメリカ、アフリカも旅をしている。他国と比較してのヨーロッパ人の率直な感想も興味深い。

大学時代に購入した本を再読。前回はそこまで深く読んでいないと思われる。読む者の、時代背景・現地情勢などに対する知識・経験によって、面白さが変わる本かもしれない。
「魔都上海 オリエンタル・トパーズ」
山崎洋子
1993年10月25日
講談社

好きだけど、どこかで読んだなぁ。


10年くらい前に読んだマンガ、「虹色のトロッキー」を再読。 以前よりも更に面白く感じる。 安彦良和(ガンダムなど)はほとんど読んだことが無いが。

時代は1930年代後半。
舞台・出てくる地はハルピン、大連、伊寧、アルマアタ、牡丹江、興安街、黒河、ブラゴベチェンスク、上海、錦州、ノモンハン。

日本人の父とモンゴル人の母の間に生まれた主人公。幼いころに家族が殺された真相を掴むにつれ、人生の歯車が変わっていく。

亡命中のトロッキー(ウクライナ人。ロシア赤軍創始者だが粛清され、メキシコ亡命)を担ぎ出して満州国に招聘し、ユダヤ人社会を味方につけて対ソ戦争に利用しようとする勢力、それに反発するさまざまな勢力、協力する勢力の中を主人公は渡り歩く。敵・味方(実際はどちらかを敵or味方と単純にはくくれない)双方に魅力的な人物が居り、一気に読みきれる。


こういうフィクション漫画は、そのフィクション部分以外をどれだけ真実に近づけさせられるかで面白さが決まると言っても良い。まだ現存している人、家族など多くの人に取材したのが分かるこの話は文句なしに「面白い」。


日華事変前後の日本陸軍・海軍・満州国軍・興安軍・中共軍・ソ連軍・その他匪賊の勢力関係、中国東北地方の立地関係の知識が有ればより楽しめる。満州国軍とは別に活動していた「興安軍」の存在すら自分は知らなかった。



p.s.この話に出てくる人物で戦後も生き延びた人物が「辻政信」というのはなんと言う皮肉だろう。(戦犯になるのを避けて逃亡を続け、時効後にベストセラー作家、国会議員、そしてラオスに潜入し行方不明に




ラストコーション

「上海リリー」
胡桃沢 耕史
文芸春秋 1993年5月

「lust caoution」とそっくりじゃないか、 と思ったがこの本の方が映画より早かった。
上海が"魔都"だったころの話。

ところで、この話のどこまでが実話でどこからが脚色なのだろうかと調べてみたら、結構実在の人物が多いのに驚く。 きっとこの人がモデルなんだろうなぁと思われる人も居たり。上海ではありふれた話なのか?
藍衣社は有名だが、 ジェスフィールド76号、そして 丁黙邨(lust cautionでは主人公?)も実在するとは。全然、秘密結社じゃないじゃん。 いや誰でも知っているが、誰も存在に触れてはならない存在だったんだろうけど。
「択捉遥かなり」の佐々木譲のメジャーデビュー?作。
フィクションなのだが、全くそうは思わせない時代考証。本当にそんなことが有ったのかもと思わせるすばらしい内容。太平洋戦争時の雰囲気もよく出ている。
視野の狭い軍事マニア向けではなく、国際感覚を持つ大人のための冒険小説。


「ベルリン飛行指令」 佐々木譲
新潮文庫 1999年1月25日
「ワイルド・スワン」 (WILD SWAN)
ユン・チアン (JUNG CHANG) /著
土屋京子 /訳

1993年1月25日 講談社

近代中国を描いた本の中でもっとも客観的に描かれた作品の一つと言って良いのでは。
日本占領下の満州、国共内戦、文化大革命、大躍進を乗り越えた家族の壮大な話。