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上海時間旅行
―蘇る"オールド上海"の記憶

佐野眞一 他
山川出版社
2010年7月20日

山川が旅行ガイド(?)を出すとこうなるのか!といった感じ。さすが。
幕末の武士から芥川龍之介、李香蘭、記録の残っていない労働者まで、戦前の日本人を魅了した上海を、複数の日本人の視点から紹介する。

それにしても上海にはまだこんなに歴史遺産が残っているんだと驚く。これから数年でほとんど消えるような気もするけど。



*私と「上海」 上海育ちが語る我が青春の"オールド上海" 
*「筆紙をもってつくすべからず」幕末の志士も驚嘆した上海
*文士達の感性が捉えた「上海」の風貌
*[コラム]上海蟹は風流な食べ物 
*「中国のハリウッド」を疾走した川喜多長政と李香蘭 
*数々の日中人間ドラマを生んだサロン「内山書店」 
*[コラム]「上海」はどう描かれてきたか 
*日本海海戦を勝利に導いた 三井物産上海支店長「山本条太郎」一代記 
*それからの阿Qたち―2010年「在上海読書日録」より― 
*上海に行くなら"浴地"へどうぞ
*上海の夜と霧―『阿片王・里見甫』を振り返って 
*20世紀最大のスパイ事件「ゾルゲ」上海へ潜行す
*上海の夜に羽ばたいた悲劇の王女「川島芳子」 
*南進論の入り口は上海だった
*上海娯楽の象徴だった大世界
*私と「上海」 一家三代の上海百年物語
上海タイフーン
福田靖/著
講談社
2008年8月26日



NHK 土曜ドラマ「上海タイフーン」
「失業し失恋した30歳OLが上海に移住し起業する」という,有りがちなようであまり無いような、いややはり有る(笑)、テレビドラマにぴったりのストーリー。ドラマを少しだけ観た事があり気になっていた。視聴者(30代女性)と主人公は層が一致し、さらに華流アイドルが共演。小説ではなくテレビドラマの脚本として書かれたもので、その視点で読むと確かに良く出来ている。

海外で起業する人は、日本で成功して得た資金又は投資家から集めた資金で始める人と、この話のようにゼロからスタートする人が居る。この話のなかでも書かれているが、上海に行けば成功するわけではない。変に夢や希望だけを持って行く人は弱肉強食の世界には耐えられない(日本で耐えられないのだから、中国で耐えられる可能性は低い)ことにもちゃんと触れている。

自分の身の周りに何人か上海在住経験の有る人が居る。この本の舞台である2007~2008年というのは、今思えば上海での盛り上がりがピークだった頃だ。新天地に住んでいたI君の家に遊びに行った時のことを思い出す。万博開催時(2011年)は中国全体ではまだまだ成長途上だが、上海だけだとピークとは過ぎていたように思う。そういう意味でもこのドラマはタイミングを掴んでいて、その雰囲気をうまく描いていて面白いと思う。この脚本家の上海滞在はわずか6日。さすが。
「日中戦争見聞記
-1939年のアジア-」


コリン・ロス著
金森誠也+安藤勉訳
1990年4月10日 新人物往来社
Colin Roβ "Das Neue Asien (NEW ASIA)" 1940Leipzig

オーストリア人(旅行中にオーストリアはドイツに併合されたので"ドイツ人"になる)の新聞記者の取材旅行記。

第二次世界大戦直前の、国際情勢が風雲急を遂げる時代。客観的な視点で書かれた"旅行記"で、非常に面白い。

中立国籍・日本の同盟国人(ドイツ人)・ヨーロッパ人、と立場を使い分けて旅をする。アメリカにも日本にも満州にも、共産党支配地域も、国民党支配地域も、イギリスやフランスの租界と移動する様は面白い。

旅のルートは、アメリカからの船で横浜で日本入国。東京・江ノ島を観光後、自らベンツを運転し広島へ。下関からフェリーに乗り釜山。ソウルを経て鉄道で満州国へ。鞍山、新京、開拓団入植地、ハルピン。外蒙古でモンゴル王の徳王と謁見後、日本軍占領下の華北へ。北京、天津、上海、香港と中国を鉄道などで縦断。車でハイフォン・ハノイへ。ハノイから民間航空機で昆明、中華民国(国民党政府)の首都の重慶へ、というもの。その後運城から成都に向かう途中で終わっている。

書ききれない多くのエピソード。
関東大震災で瓦礫の山になった横浜。出征兵士を送る賑やかな行列の後に来る、戦死した兵士の葬列。車で日本横断中の村々での様子。日本統治下の朝鮮。満蒙開拓団との対話。近代化が図られている途上の満州。日本とロシアの間で揺れ動くモンゴル。清が滅びた後の混沌とした北京。北京・天津・上海での欧米諸国の租界の様子。近未来に来襲する日本軍に怯える香港のイギリス人。日本軍戦闘機に襲われるフライト。空襲下の重慶での生活...

今となっては貴重な、多くの人との対話。
阿南陸軍大臣、星野満州国総務長官、満蒙開拓団、ハルピンの亡命ロシア人、徳王(モンゴルの王、日本軍の傀儡政府のお飾り)、華北進駐の日本軍兵士。重慶に住むのドイツ人(ドイツは日本の同盟国だが、中華民国に宣戦布告したわけではない)、中国国民党員などなど。

訪日前に彼は南北アメリカ、アフリカも旅をしている。他国と比較してのヨーロッパ人の率直な感想も興味深い。

大学時代に購入した本を再読。前回はそこまで深く読んでいないと思われる。読む者の、時代背景・現地情勢などに対する知識・経験によって、面白さが変わる本かもしれない。
「上海このごろ多事騒然」開放政策化の庶民事情
趙夢雲/著
1993年5月、大村書店

自分が初めて中国に行ったのは1993年。ちょうどその頃に書かれた話。急速に改革が始まった頃の上海での庶民の暮らしが分かりやすく書かれている。分かりやすいと感じるのは、著者が日本に留学に来た上海人だからだろう。著者が育った上海の町が帰省する度にどんどん変わっていく。日本人の心をよく知る中国人だかこそ書けるのだ。著者は中国国際旅行社専属の日本人ガイドだったこともあり、日本人がどのようなことに興味を持っているのかをよく知っていて、文章も分かりやすい。
翻訳ではない。中国人が日本語で書いている。


この本の趣旨ではないが、戦前の上海の様子が少し描かれている。文革時の中国の様子を知る日本人は少ない。つい最近(この本の書かれた1990年代初頭)までは戦前の上海の日本租界の建物はたくさん残っていたのだ。現在はもう見ることができない...