250中国東北史の最近のブログ記事

赤い月〈上〉
赤い月〈下〉
なかにし礼
2001年4月
新潮社

著者の満州での幼少期に体験を下に書かれて私小説だが、主人公は母だ。 よくある「戦争の悲惨さ」だけを描いたものではない。著者の母の特異な過去をモチーフに、母の強さを描く。
中国史の目撃者」毛沢東から鄧小平まで
ジョン・ロードリック/著、山田耕介/訳
1994年7月14日
TBSブリタニカ

"COVERING CHINA" by John Roderick

~ロドリックさん、あなたがドアを開けました。
1971年4月12日 周恩来

語学の才と機知を認められて、アメリカの諜報要員として徴兵された地方新聞記者青年。インドを経て重慶政府付として第二次世界大戦末期に四川省に向かう。戦後はAP通信特派員として中国共産党の取材に当たる。長征にも同行し、延安での中国共産党埋伏時代も経験した唯一の外国人記者となったために、毛沢東を始めとする革命第一世代と個人的な繋がりを持つ貴重な経験を得る。当時の描写部分がこの本で最も盛り上がる部分だ。
文化大革命時代は入国できなかったために、日本で中国の定点観測を行うのだが、文革前の経験が有る為に適切な判断をすることが出来ている。中国とアメリカが再び外交を結ぶきっかけとなるピンポン外交も同行するなど、非常に稀有な経験をしている。
89年の天安門事変での鄧小平の学生弾圧の判断について批難はしているが、鄧小平のその決断については予め予測していたようだ。

この本を読み、中国共産党のこれまでの経緯について評価はしなくてはいけない。毛沢東と鄧小平の業績はやはり大きい。ただ、彼(著者)も何度も悔しさ(?)を交えて書いているが、毛沢東と鄧小平の"変わり身"が残念でならない。
「日中戦争見聞記
-1939年のアジア-」


コリン・ロス著
金森誠也+安藤勉訳
1990年4月10日 新人物往来社
Colin Roβ "Das Neue Asien (NEW ASIA)" 1940Leipzig

オーストリア人(旅行中にオーストリアはドイツに併合されたので"ドイツ人"になる)の新聞記者の取材旅行記。

第二次世界大戦直前の、国際情勢が風雲急を遂げる時代。客観的な視点で書かれた"旅行記"で、非常に面白い。

中立国籍・日本の同盟国人(ドイツ人)・ヨーロッパ人、と立場を使い分けて旅をする。アメリカにも日本にも満州にも、共産党支配地域も、国民党支配地域も、イギリスやフランスの租界と移動する様は面白い。

旅のルートは、アメリカからの船で横浜で日本入国。東京・江ノ島を観光後、自らベンツを運転し広島へ。下関からフェリーに乗り釜山。ソウルを経て鉄道で満州国へ。鞍山、新京、開拓団入植地、ハルピン。外蒙古でモンゴル王の徳王と謁見後、日本軍占領下の華北へ。北京、天津、上海、香港と中国を鉄道などで縦断。車でハイフォン・ハノイへ。ハノイから民間航空機で昆明、中華民国(国民党政府)の首都の重慶へ、というもの。その後運城から成都に向かう途中で終わっている。

書ききれない多くのエピソード。
関東大震災で瓦礫の山になった横浜。出征兵士を送る賑やかな行列の後に来る、戦死した兵士の葬列。車で日本横断中の村々での様子。日本統治下の朝鮮。満蒙開拓団との対話。近代化が図られている途上の満州。日本とロシアの間で揺れ動くモンゴル。清が滅びた後の混沌とした北京。北京・天津・上海での欧米諸国の租界の様子。近未来に来襲する日本軍に怯える香港のイギリス人。日本軍戦闘機に襲われるフライト。空襲下の重慶での生活...

今となっては貴重な、多くの人との対話。
阿南陸軍大臣、星野満州国総務長官、満蒙開拓団、ハルピンの亡命ロシア人、徳王(モンゴルの王、日本軍の傀儡政府のお飾り)、華北進駐の日本軍兵士。重慶に住むのドイツ人(ドイツは日本の同盟国だが、中華民国に宣戦布告したわけではない)、中国国民党員などなど。

訪日前に彼は南北アメリカ、アフリカも旅をしている。他国と比較してのヨーロッパ人の率直な感想も興味深い。

大学時代に購入した本を再読。前回はそこまで深く読んでいないと思われる。読む者の、時代背景・現地情勢などに対する知識・経験によって、面白さが変わる本かもしれない。
越境~北朝鮮から売られてきた花嫁
新井貴/著
2000年6月

著者は仕事で訪れた北京で、日本語を勉強している女性と出会う。その女性の友達に、「北朝鮮から逃亡してきた日本人女性の子供」がいると言う。その女性は嫁不足の中国の田舎で中国人男性の嫁になり、更に理解の有る(?)中国人夫は、その女性の母親である"日本人"も北朝鮮から連れ出して、今は義理の親子3人で幸せに(?)暮らしていると言う。

日本人女性の子供なら日本人なのではないのか。そもそも北朝鮮に住む日本人??と謎は深まるが、その謎は、著者がその女性と対面することによってすべて明らかになる。

特に素晴らしいルポ、特ダネと言う程の本ではないのだろうが、こういう環境の人が居るというのを知ることは出来る。北朝鮮が"潰れる"と言われるようになって何年経つのだろうか。いつまでこの状態が続くのか分からないが、このような人は代々に渡って苦しんでいるのだ。

ちなみにこの女性(Aさん)の母親(Bさん)は、その母親(Cさん)が戦後の混乱期に朝鮮人と結婚し、北朝鮮の帰国事業にのって北朝鮮に渡ったことからこの話は始まる。よって北朝鮮で生まれたAさんは日本語を話せないし、Bさんの知る日本は子供時代の知識のまま止まっている。AさんもBさんも無国籍で、中国の公安に賄賂を払いながら中国で暮らしている。何十年も前の"失敗"のせいで問題はどんどん複雑になっていく...
もちろんこの本に解決策は書いていない。


10年くらい前に読んだマンガ、「虹色のトロッキー」を再読。 以前よりも更に面白く感じる。 安彦良和(ガンダムなど)はほとんど読んだことが無いが。

時代は1930年代後半。
舞台・出てくる地はハルピン、大連、伊寧、アルマアタ、牡丹江、興安街、黒河、ブラゴベチェンスク、上海、錦州、ノモンハン。

日本人の父とモンゴル人の母の間に生まれた主人公。幼いころに家族が殺された真相を掴むにつれ、人生の歯車が変わっていく。

亡命中のトロッキー(ウクライナ人。ロシア赤軍創始者だが粛清され、メキシコ亡命)を担ぎ出して満州国に招聘し、ユダヤ人社会を味方につけて対ソ戦争に利用しようとする勢力、それに反発するさまざまな勢力、協力する勢力の中を主人公は渡り歩く。敵・味方(実際はどちらかを敵or味方と単純にはくくれない)双方に魅力的な人物が居り、一気に読みきれる。


こういうフィクション漫画は、そのフィクション部分以外をどれだけ真実に近づけさせられるかで面白さが決まると言っても良い。まだ現存している人、家族など多くの人に取材したのが分かるこの話は文句なしに「面白い」。


日華事変前後の日本陸軍・海軍・満州国軍・興安軍・中共軍・ソ連軍・その他匪賊の勢力関係、中国東北地方の立地関係の知識が有ればより楽しめる。満州国軍とは別に活動していた「興安軍」の存在すら自分は知らなかった。



p.s.この話に出てくる人物で戦後も生き延びた人物が「辻政信」というのはなんと言う皮肉だろう。(戦犯になるのを避けて逃亡を続け、時効後にベストセラー作家、国会議員、そしてラオスに潜入し行方不明に
「ワイルド・スワン」 (WILD SWAN)
ユン・チアン (JUNG CHANG) /著
土屋京子 /訳

1993年1月25日 講談社

近代中国を描いた本の中でもっとも客観的に描かれた作品の一つと言って良いのでは。
日本占領下の満州、国共内戦、文化大革命、大躍進を乗り越えた家族の壮大な話。

「事変~リットン報告書ヲ奪取セヨ」 池宮彰一郎

新潮文庫 平成7年12月1日