210朝鮮地理の最近のブログ記事

鴨緑江流るる」 大林高士
1998年12月25日ティ・アイ・エス

フリージャーナリストの書いた小説。北朝鮮の一技術者と、地方に住む帰還家族の一少女がたどる運命。
北朝鮮の国内で起こっている事は、脱北者からの伝聞でしか知ることが出来ない。たとえジャーナリストでも自らの取材ではなく、インタビューからでしか知る術がないとすれば、今回のことも"小説"という形式を取らなければならなかったのだろう。

北朝鮮のミサイルはこれまでのところ"失敗"に終わっている。今後も"成功"はしないと思うのだが、あの飢餓国家がGNPの何割もの巨費を費やしてまでなぜミサイルにこだわるのかを考えてみたら怖い。

では、登場人物のような人達を救うにはどうしたらよいかと考えるとまた難しいのだが。アメを与えるべきかムチを与えるべきか。第二次世界大戦を終わらせるには原爆が必要だったのかと同じで。
半島へ、ふたたび
蓮池薫/著
新潮社
2009年6月25日

"拉致被害者"の蓮池さんのエッセー。
前半は著者のソウル旅行の旅行記。「日本語・南北それぞれの朝鮮語が分かる、北朝鮮で暮らした事の有る日本人」という特殊な立場の人の韓国旅行ということで、普通の日本人のソウル旅行記とは少し異なっていて面白い。北朝鮮と韓国との微妙な差(政治体制や生活レベルはもちろん大きく違うが、民族の性格は当たり前だが似ている)を考えながらの旅。
わずか数日のソウル旅行だけでこれだけ文章を書けるのだから、旅の思い出は旅の長さや、どれだけすごい所(?)に行ったかというのが重要でないことがよく分かる。

後半は、日本での翻訳家としての生活、韓国の小説化との交流についてのエッセー。ブログからの転載ということも有り、そんなに示唆に富んだ文章という訳ではないが、"翻訳家"の心情などは興味深い。

この人も日本に帰国してもう何年も経っているのかと改めて思う。まだ帰国していない拉致被害者のことも気になるが、蓮池さんのこれまでの北朝鮮での暮らしも非常に気になる。まだ公に出来ないことがたくさん有るのだろうと思う。
「日中戦争見聞記
-1939年のアジア-」


コリン・ロス著
金森誠也+安藤勉訳
1990年4月10日 新人物往来社
Colin Roβ "Das Neue Asien (NEW ASIA)" 1940Leipzig

オーストリア人(旅行中にオーストリアはドイツに併合されたので"ドイツ人"になる)の新聞記者の取材旅行記。

第二次世界大戦直前の、国際情勢が風雲急を遂げる時代。客観的な視点で書かれた"旅行記"で、非常に面白い。

中立国籍・日本の同盟国人(ドイツ人)・ヨーロッパ人、と立場を使い分けて旅をする。アメリカにも日本にも満州にも、共産党支配地域も、国民党支配地域も、イギリスやフランスの租界と移動する様は面白い。

旅のルートは、アメリカからの船で横浜で日本入国。東京・江ノ島を観光後、自らベンツを運転し広島へ。下関からフェリーに乗り釜山。ソウルを経て鉄道で満州国へ。鞍山、新京、開拓団入植地、ハルピン。外蒙古でモンゴル王の徳王と謁見後、日本軍占領下の華北へ。北京、天津、上海、香港と中国を鉄道などで縦断。車でハイフォン・ハノイへ。ハノイから民間航空機で昆明、中華民国(国民党政府)の首都の重慶へ、というもの。その後運城から成都に向かう途中で終わっている。

書ききれない多くのエピソード。
関東大震災で瓦礫の山になった横浜。出征兵士を送る賑やかな行列の後に来る、戦死した兵士の葬列。車で日本横断中の村々での様子。日本統治下の朝鮮。満蒙開拓団との対話。近代化が図られている途上の満州。日本とロシアの間で揺れ動くモンゴル。清が滅びた後の混沌とした北京。北京・天津・上海での欧米諸国の租界の様子。近未来に来襲する日本軍に怯える香港のイギリス人。日本軍戦闘機に襲われるフライト。空襲下の重慶での生活...

今となっては貴重な、多くの人との対話。
阿南陸軍大臣、星野満州国総務長官、満蒙開拓団、ハルピンの亡命ロシア人、徳王(モンゴルの王、日本軍の傀儡政府のお飾り)、華北進駐の日本軍兵士。重慶に住むのドイツ人(ドイツは日本の同盟国だが、中華民国に宣戦布告したわけではない)、中国国民党員などなど。

訪日前に彼は南北アメリカ、アフリカも旅をしている。他国と比較してのヨーロッパ人の率直な感想も興味深い。

大学時代に購入した本を再読。前回はそこまで深く読んでいないと思われる。読む者の、時代背景・現地情勢などに対する知識・経験によって、面白さが変わる本かもしれない。

「平壌の水槽 ~北朝鮮 地獄の強制収容所」
姜哲煥
ポプラ社
2003年8月26日

「民族世界地図」 浅井信雄

新潮文庫 平成9年6月1日