上海の最近のブログ記事

上海メモラビリア
草思社
2003/5/22


1990年代末、急速に発展する上海で過ごす庶民の姿、"旅行"で訪れただけでは気付かない、人々の心の内を、上海で生まれ育った筆者が瑞々しい文章で描く。
ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記
ウルスラ・ベーコン/著
和田まゆ子/訳
祥伝社/2007年11月18日

ドイツで裕福な暮らしをしていたユダヤ人一家。著者の父親がある日突然警察に連行された事から話が始る。
国外に行く事を条件に父親を引き取り、イタリアから上海行きの船に乗るためにドイツを出国。財産の国外持ち出しが出来ないために、持てる限りの日用品を持ち出発。次々とユダヤ人迫害の政策が出される中の移動、現金資産を海外に持ち出せない為に、莫大なお金で船のチケットを入手したので船の中では落ち着いた日々を過ごせたが、上海で船を下りた時点から始る過酷な生活は、読んでいてかなり興味深い。14歳の女の子が体験する様々な出来事。

当時の上海の様子の描写が、ヨーロッパ人少女の目で、飾らず書かれている。アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・中国国民党・謎の団体など様々な権力の下で起こる様々な事件。他人事ではなく一少女に直接降りかかる災難を、父親の才覚・偶然に知り合う他の避難民・家族を世話する中国人召使(?)・ビジネスパートナー・闇組織の首領(?)・その愛人達など謎の中国人などに助けられて、又は自分の機転を利かせて乗り越えていく。

9年間の上海での亡命(無国籍になったので亡命すら出来ないのだが)生活の記録。彼女の日本人と中国人に対する描写が面白い。

部屋を借りるため、中国人の大家の部屋で賃貸契約書にサインをするのだが、その時に起こる想定外の事件(?)の箇所の描写が特に面白い。こんな事が有るのかと唸らされる。



ユダヤ人の悲劇、具体的な事件を自分の言葉で書いていて「アンネの日記」よりも興味深く読めた。

戦争が終わってから彼女はアメリカ国籍を取得し、上海で支えあった人達とアメリカで新生活を始めるのだが、このような人達がアメリカの繁栄を支えているのだと思うと、色々と考えさせられる。

著者の父親は避難民の立場で上海で事業を興す(さすがユダヤ人...)。そのおかげで家族は生き延びる事が出来たのだが、彼は上海での日々で何度か「まさかこんな事になるなら予め手を打っておいたらよかった。お金さえ予め海外の銀行に預けておけば...」と述べる。 現代の日本人がこのような境遇(無国籍になり避難民生活を送る)と言う事になる事は、可能性が全くないと言えるだろうか。また大地震が日本で起こり、大都市や原発が直接被害を受けたらもしや...と考えた。
上海時間旅行
―蘇る"オールド上海"の記憶

佐野眞一 他
山川出版社
2010年7月20日

山川が旅行ガイド(?)を出すとこうなるのか!といった感じ。さすが。
幕末の武士から芥川龍之介、李香蘭、記録の残っていない労働者まで、戦前の日本人を魅了した上海を、複数の日本人の視点から紹介する。

それにしても上海にはまだこんなに歴史遺産が残っているんだと驚く。これから数年でほとんど消えるような気もするけど。



*私と「上海」 上海育ちが語る我が青春の"オールド上海" 
*「筆紙をもってつくすべからず」幕末の志士も驚嘆した上海
*文士達の感性が捉えた「上海」の風貌
*[コラム]上海蟹は風流な食べ物 
*「中国のハリウッド」を疾走した川喜多長政と李香蘭 
*数々の日中人間ドラマを生んだサロン「内山書店」 
*[コラム]「上海」はどう描かれてきたか 
*日本海海戦を勝利に導いた 三井物産上海支店長「山本条太郎」一代記 
*それからの阿Qたち―2010年「在上海読書日録」より― 
*上海に行くなら"浴地"へどうぞ
*上海の夜と霧―『阿片王・里見甫』を振り返って 
*20世紀最大のスパイ事件「ゾルゲ」上海へ潜行す
*上海の夜に羽ばたいた悲劇の王女「川島芳子」 
*南進論の入り口は上海だった
*上海娯楽の象徴だった大世界
*私と「上海」 一家三代の上海百年物語
上海のMBAで出会った
中国の若きエリートたちの素顔

岡本聡子
アルク 2005年10月17日

中国でMBAを取得した著者の留学期間中の体験記。小泉首相が靖国参拝した時期とかぶる。MBA留学の体験記だが、勉強の内容についてはほとんど触れられていない。中国人のエリート 達の行動が、さもありなんといったものばかりで、中国に留学したものが読めば頷く事が多いかと思う。それにしても彼ら(外国人と接する機会が多いエリート)ですらこうなのだから、中国一般人の日本についての情報量はかなり限られる、偏ったものだろう。脳残君と話をしても感じたが。
上海タイフーン
福田靖/著
講談社
2008年8月26日



NHK 土曜ドラマ「上海タイフーン」
「失業し失恋した30歳OLが上海に移住し起業する」という,有りがちなようであまり無いような、いややはり有る(笑)、テレビドラマにぴったりのストーリー。ドラマを少しだけ観た事があり気になっていた。視聴者(30代女性)と主人公は層が一致し、さらに華流アイドルが共演。小説ではなくテレビドラマの脚本として書かれたもので、その視点で読むと確かに良く出来ている。

海外で起業する人は、日本で成功して得た資金又は投資家から集めた資金で始める人と、この話のようにゼロからスタートする人が居る。この話のなかでも書かれているが、上海に行けば成功するわけではない。変に夢や希望だけを持って行く人は弱肉強食の世界には耐えられない(日本で耐えられないのだから、中国で耐えられる可能性は低い)ことにもちゃんと触れている。

自分の身の周りに何人か上海在住経験の有る人が居る。この本の舞台である2007~2008年というのは、今思えば上海での盛り上がりがピークだった頃だ。新天地に住んでいたI君の家に遊びに行った時のことを思い出す。万博開催時(2011年)は中国全体ではまだまだ成長途上だが、上海だけだとピークとは過ぎていたように思う。そういう意味でもこのドラマはタイミングを掴んでいて、その雰囲気をうまく描いていて面白いと思う。この脚本家の上海滞在はわずか6日。さすが。
「夜の上海」
高 真由子/著
2007年8月29日 講談社

映画の脚本とは知らずに購入。
2005年くらいの上海が舞台。こんなことが有るような、無いような。発展途中の上海を舞台にしたラブストーリー。少し話が薄いかな...



「上海このごろ多事騒然」開放政策化の庶民事情
趙夢雲/著
1993年5月、大村書店

自分が初めて中国に行ったのは1993年。ちょうどその頃に書かれた話。急速に改革が始まった頃の上海での庶民の暮らしが分かりやすく書かれている。分かりやすいと感じるのは、著者が日本に留学に来た上海人だからだろう。著者が育った上海の町が帰省する度にどんどん変わっていく。日本人の心をよく知る中国人だかこそ書けるのだ。著者は中国国際旅行社専属の日本人ガイドだったこともあり、日本人がどのようなことに興味を持っているのかをよく知っていて、文章も分かりやすい。
翻訳ではない。中国人が日本語で書いている。


この本の趣旨ではないが、戦前の上海の様子が少し描かれている。文革時の中国の様子を知る日本人は少ない。つい最近(この本の書かれた1990年代初頭)までは戦前の上海の日本租界の建物はたくさん残っていたのだ。現在はもう見ることができない...
「魔都上海 オリエンタル・トパーズ」
山崎洋子
1993年10月25日
講談社

好きだけど、どこかで読んだなぁ。


10年くらい前に読んだマンガ、「虹色のトロッキー」を再読。 以前よりも更に面白く感じる。 安彦良和(ガンダムなど)はほとんど読んだことが無いが。

時代は1930年代後半。
舞台・出てくる地はハルピン、大連、伊寧、アルマアタ、牡丹江、興安街、黒河、ブラゴベチェンスク、上海、錦州、ノモンハン。

日本人の父とモンゴル人の母の間に生まれた主人公。幼いころに家族が殺された真相を掴むにつれ、人生の歯車が変わっていく。

亡命中のトロッキー(ウクライナ人。ロシア赤軍創始者だが粛清され、メキシコ亡命)を担ぎ出して満州国に招聘し、ユダヤ人社会を味方につけて対ソ戦争に利用しようとする勢力、それに反発するさまざまな勢力、協力する勢力の中を主人公は渡り歩く。敵・味方(実際はどちらかを敵or味方と単純にはくくれない)双方に魅力的な人物が居り、一気に読みきれる。


こういうフィクション漫画は、そのフィクション部分以外をどれだけ真実に近づけさせられるかで面白さが決まると言っても良い。まだ現存している人、家族など多くの人に取材したのが分かるこの話は文句なしに「面白い」。


日華事変前後の日本陸軍・海軍・満州国軍・興安軍・中共軍・ソ連軍・その他匪賊の勢力関係、中国東北地方の立地関係の知識が有ればより楽しめる。満州国軍とは別に活動していた「興安軍」の存在すら自分は知らなかった。



p.s.この話に出てくる人物で戦後も生き延びた人物が「辻政信」というのはなんと言う皮肉だろう。(戦犯になるのを避けて逃亡を続け、時効後にベストセラー作家、国会議員、そしてラオスに潜入し行方不明に




ラストコーション

「上海リリー」
胡桃沢 耕史
文芸春秋 1993年5月

「lust caoution」とそっくりじゃないか、 と思ったがこの本の方が映画より早かった。
上海が"魔都"だったころの話。

ところで、この話のどこまでが実話でどこからが脚色なのだろうかと調べてみたら、結構実在の人物が多いのに驚く。 きっとこの人がモデルなんだろうなぁと思われる人も居たり。上海ではありふれた話なのか?
藍衣社は有名だが、 ジェスフィールド76号、そして 丁黙邨(lust cautionでは主人公?)も実在するとは。全然、秘密結社じゃないじゃん。 いや誰でも知っているが、誰も存在に触れてはならない存在だったんだろうけど。
「択捉遥かなり」の佐々木譲のメジャーデビュー?作。
フィクションなのだが、全くそうは思わせない時代考証。本当にそんなことが有ったのかもと思わせるすばらしい内容。太平洋戦争時の雰囲気もよく出ている。
視野の狭い軍事マニア向けではなく、国際感覚を持つ大人のための冒険小説。


「ベルリン飛行指令」 佐々木譲
新潮文庫 1999年1月25日