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沢木耕太郎

登山家の山野井泰史のギャチュンカン(ヒマラヤ)北壁登攀の記録。この登攀数日間は彼の生き方を体現していると言って良く、そこに至るまでの彼の人生を紹介しながら、クライマックスである登頂後の2日間の場面までどんどん引っ張っていく著者(沢木耕太郎)の筆力がすごい。
もちろん書かれているのは、人並みはずれた山野井夫妻の生命力。空気の薄い標高7000mの高さにある、高さ1000mの壁を這い登る二人に吹雪と雪崩が襲い掛かる様子。夜は岩にハーケンを打ちロープを張ってぶら下がって眠る二人は、食欲が無くなり、目が見えなくなり、凍傷で指先が次々やられていく。これは記録小説なのだが、沢木耕太郎の作品にしては珍しく読後の高揚感有り。ギャチュンカンのベースキャンプに行ってみたいと思った自分は変なのだろうか。
中国史の目撃者」毛沢東から鄧小平まで
ジョン・ロードリック/著、山田耕介/訳
1994年7月14日
TBSブリタニカ

"COVERING CHINA" by John Roderick

~ロドリックさん、あなたがドアを開けました。
1971年4月12日 周恩来

語学の才と機知を認められて、アメリカの諜報要員として徴兵された地方新聞記者青年。インドを経て重慶政府付として第二次世界大戦末期に四川省に向かう。戦後はAP通信特派員として中国共産党の取材に当たる。長征にも同行し、延安での中国共産党埋伏時代も経験した唯一の外国人記者となったために、毛沢東を始めとする革命第一世代と個人的な繋がりを持つ貴重な経験を得る。当時の描写部分がこの本で最も盛り上がる部分だ。
文化大革命時代は入国できなかったために、日本で中国の定点観測を行うのだが、文革前の経験が有る為に適切な判断をすることが出来ている。中国とアメリカが再び外交を結ぶきっかけとなるピンポン外交も同行するなど、非常に稀有な経験をしている。
89年の天安門事変での鄧小平の学生弾圧の判断について批難はしているが、鄧小平のその決断については予め予測していたようだ。

この本を読み、中国共産党のこれまでの経緯について評価はしなくてはいけない。毛沢東と鄧小平の業績はやはり大きい。ただ、彼(著者)も何度も悔しさ(?)を交えて書いているが、毛沢東と鄧小平の"変わり身"が残念でならない。
脱出記 ~The Long Walk~
スラヴォミール・ラウイッツ 著
海津雅彦 翻訳
2005年9月10日
株式会社ソニーマガジンズ
1941年ポーランド陸軍騎兵隊中尉だった筆者は、突然ソ連にスパイ容疑で逮捕され、そのままシベリア奥地の強制収容所に収容される。極寒の収容所で次々と仲間が死んでいく中、このまま死ぬよりはと仲間6人での脱走を決意する。
追手を撒きながら、シベリアのタイガ(針葉樹林帯)、モンゴルの草原、ゴビ砂漠、甘粛・青海の高山地帯、チベットの荒野、ブータンの山々を、すべて徒歩で越えてインドまでたどりつく。
インドでイギリス軍に保護されるまでの壮絶な記録。
大自然を生き抜く知識、国際情勢の知識、あきらめない意志のすべてを持ち合わせた者だけが生き残る。

1956年のイギリスのベストセラーの翻訳版。2004年に著者が亡くなってから、日本で出版された。


[2013年3月追記]
「極寒のシベリアや酷暑のゴビ砂漠を、水も食糧も持たずに踏破できるのか、ましてや雪男まで登場...フィクションとしても面白くない、残念」というコメントが有ったので意見を。
自分も雪男なんて信じていないが、筆者がシベリアの収容所を脱出してインドまで到着したのは事実で、亡命後にイギリスでこの本を出したのも紛れも無い事実。自分の無実の罪で収容所に送られた経緯、ソビエトの横暴を世界に知らしめたと言う意味でも、この本は面白いと、自分は思います。
[2013年3月追記]
ビリヤニハウスに 何か面白いルートで旅したいという人が居たので、参考図書として寄贈しました。


映画化されたようです。 「 WAYBACK
2012年9月 映画日本語字幕版予告