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西南シルクロードは密林に消える
高野秀行
2003/2/27 講談社

シルクロードと言えば中国西北部の砂漠を通るルートがまず思い浮かぶが、中国西南部・ビルマからインドに抜ける"西南シルクロード"の実在を確かめようと、単身(当初はカメラマンと二人)で向かった著者の紀行文。
中国・ビルマ・インドどの政府の勢力も及ばない山岳地帯を、知人のゲリラ(?)を頼って走破しようと、無謀にも思える旅に出た著者。情報が全く無いエリアで、道なき道を進むことになるので無計画なのは仕方が無い。

面白いのはカチンゲリラとビルマ政府は既に停戦協定を結んでいて、ゲリラ達はこんな山奥でゲリラ生活をする必要がなくなっているのに、著者は密入国しているために政府が支配する街や道路に出ることが出来ない。仕方なく道なき道を乗り越えていく事になり、カチン族やナガ族の日常を知る事になる。この数十年間外国人が誰も訪れていない地域(ゲリラ達ですら隣の部族のエリアの事を知らず、部族間の彼らのやりとりも興味深い)を旅する不思議な旅行記。

先が全く見えない旅をユーモアあふれる絶妙な文体で描く。過酷な体験もすばらしいが、独特の世界に誘導するこの文章が、この著者の良いところだ。行き当たりばったりのように見えて(いや、かなり行き当たりばったりなのだが...)、危機を抜けていく(危機を乗り越えていくと言うよりも、抜けていくと言う方がしっくりする)のは著者の運が良かっただけではない。これまでの著者の様々な経験や知識が、それを助けているのだ。


この旅は誰の指図も受けていない。著者の熱い思い(ただの思いつき?)、やってみたいと思う固い意思(後戻りできない境遇?)が彼を後押しして、この旅が実現した。「旅好き」とはこういう人を言うのだ。