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「オホーツク諜報船」 西木正明

オホーツク諜報船」 西木正明 /著
1985年10月 角川書店/刊

ほとんどの日本人にとって、東西冷戦は非日常の世界で起こっていることであり、日々の生活では実感することは無かった。だが国境(日本政府は国境と認めていないが)に位置する根室~北海道東端~に暮らす人々、特に漁師達にとっては北方四島問題は非常に身近な問題で、日々の生活に大きな影響を与えていた。海を隔てて見える色丹島はロシア人が実効支配している。冷戦時代、漁に出た人がソ連の国境警備隊に拿捕される事件が頻発した。拿捕された人は、ソ連の刑務所に送られ何年間か抑留された。

だが、なぜかソ連に捕まらない船があった。ソ連が実効支配している海は荒らされていないので漁獲量は大きい。いつも大漁で戻ってきた人は富をなし、根室には"御殿"が何軒も立ち並んだ。そのような人はソ連に賄賂を贈ったり、スパイの手助けをしているのだと噂され、「ロスケ船」「レポ船(ロシアに情報をレポートする船)」と陰口をたたかれた。警察も取り締まろうにも現場を押さえられない。ソ連が実効支配している所に日本の警察が行くわけには行かないからだ。ベトナム戦争時には脱走米兵が密出国したとも言われる。

...そんな時に、千歳基地のアメリカ空軍情報将校が行方不明になる事件が起こった~



よく調べられてるなぁと思う。フィクションかとも思えるくらいだ。この本を書くにあたり著者は根室の漁師に混じって酒盛りをやり、レポ船員に張り付き、公安に聞き込みをし、北海道各地、シベリアをまわり、スカンジナビアまで脱走米兵に話を聞きに言ったという。昭和40年代の北の海の様子が良く分かり興味深い。


この話の主人公は、ソ連に拿捕された真面目な漁師。新婚だった彼が拿捕の5年後に釈放されて戻って来たとき、妻は他の男と駆け落ちしていた。そこから世界が動いていく。



追記:ソ連が崩壊して「レポ船」の価値はなくなったのだろうか。 今年2010年1月、国後島沖で日本漁船がロシア国境警備隊から銃撃を受けた。ロシアは「漁船が国境侵犯をした」と発表し、日本の外務省はロシア大使館に抗議をした。だがここで不可解なのは、銃撃を受けたことが分かったのは、漁船が帰航して時間が経ってからなのだ。漁船は銃撃を受けた穴を隠し、 GPSの記録を削除していたのだ。加害者ではなく被害者が事件を隠した。漁船員は「迷惑を掛けてるので、銃撃を受けたことは言えなかった」と謎のコメントをしたことが新聞の片隅に載っていた。新聞を読んだ時に引っかかっていたことが、この本を読んで少し分かったような気がした。



ウキペディアに「レポ船」の項目があった。さすが。[漁業]カテゴリになるんだ...
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%9D%E8%88%B9

昭和56年の警察白書に「レポ船」が絡む事件報告が載っている。ソ連だけでなく北朝鮮工作員も絡んでいる。「工作船」が日本海で活動していることを当時から警察は把握していたのだ。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/s56/s560800.html

この著者、どこかで聞いた名前だなぁと思ったら「夢顔さんによろしく」の著者だった。 これも面白かった。

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