2012年1月アーカイブ

鴨緑江流るる」 大林高士
1998年12月25日ティ・アイ・エス

フリージャーナリストの書いた小説。北朝鮮の一技術者と、地方に住む帰還家族の一少女がたどる運命。
北朝鮮の国内で起こっている事は、脱北者からの伝聞でしか知ることが出来ない。たとえジャーナリストでも自らの取材ではなく、インタビューからでしか知る術がないとすれば、今回のことも"小説"という形式を取らなければならなかったのだろう。

北朝鮮のミサイルはこれまでのところ"失敗"に終わっている。今後も"成功"はしないと思うのだが、あの飢餓国家がGNPの何割もの巨費を費やしてまでなぜミサイルにこだわるのかを考えてみたら怖い。

では、登場人物のような人達を救うにはどうしたらよいかと考えるとまた難しいのだが。アメを与えるべきかムチを与えるべきか。第二次世界大戦を終わらせるには原爆が必要だったのかと同じで。
偽偽満州
岩井志麻子/著
集英社
2004年2月26日


なんて悪い男なんだ、中西は...(苦笑)
【出版社の紹介文】 昭和初期の岡山。美貌と巧みな嘘で男たちを虜にする売れっ子女郎・稲子。客の中西に世間を騒がすピストル強盗・通称ピス完の面影をみた稲子は、商売を忘れてこの悪漢に惚れ込んだ。ともに大陸へ渡ったが、大連で遊廓に売られ、中西を追う旅が始まる―。見知らぬ異国で、人を殺め、金を奪い、男を騙しつつ、思う男に抱かれたい一心の逃避行。赤い大地を破滅へと疾走する女が見た夢の果てに...。

上海タイフーン
福田靖/著
講談社
2008年8月26日



NHK 土曜ドラマ「上海タイフーン」
「失業し失恋した30歳OLが上海に移住し起業する」という,有りがちなようであまり無いような、いややはり有る(笑)、テレビドラマにぴったりのストーリー。ドラマを少しだけ観た事があり気になっていた。視聴者(30代女性)と主人公は層が一致し、さらに華流アイドルが共演。小説ではなくテレビドラマの脚本として書かれたもので、その視点で読むと確かに良く出来ている。

海外で起業する人は、日本で成功して得た資金又は投資家から集めた資金で始める人と、この話のようにゼロからスタートする人が居る。この話のなかでも書かれているが、上海に行けば成功するわけではない。変に夢や希望だけを持って行く人は弱肉強食の世界には耐えられない(日本で耐えられないのだから、中国で耐えられる可能性は低い)ことにもちゃんと触れている。

自分の身の周りに何人か上海在住経験の有る人が居る。この本の舞台である2007~2008年というのは、今思えば上海での盛り上がりがピークだった頃だ。新天地に住んでいたI君の家に遊びに行った時のことを思い出す。万博開催時(2011年)は中国全体ではまだまだ成長途上だが、上海だけだとピークとは過ぎていたように思う。そういう意味でもこのドラマはタイミングを掴んでいて、その雰囲気をうまく描いていて面白いと思う。この脚本家の上海滞在はわずか6日。さすが。
中国史の目撃者」毛沢東から鄧小平まで
ジョン・ロードリック/著、山田耕介/訳
1994年7月14日
TBSブリタニカ

"COVERING CHINA" by John Roderick

~ロドリックさん、あなたがドアを開けました。
1971年4月12日 周恩来

語学の才と機知を認められて、アメリカの諜報要員として徴兵された地方新聞記者青年。インドを経て重慶政府付として第二次世界大戦末期に四川省に向かう。戦後はAP通信特派員として中国共産党の取材に当たる。長征にも同行し、延安での中国共産党埋伏時代も経験した唯一の外国人記者となったために、毛沢東を始めとする革命第一世代と個人的な繋がりを持つ貴重な経験を得る。当時の描写部分がこの本で最も盛り上がる部分だ。
文化大革命時代は入国できなかったために、日本で中国の定点観測を行うのだが、文革前の経験が有る為に適切な判断をすることが出来ている。中国とアメリカが再び外交を結ぶきっかけとなるピンポン外交も同行するなど、非常に稀有な経験をしている。
89年の天安門事変での鄧小平の学生弾圧の判断について批難はしているが、鄧小平のその決断については予め予測していたようだ。

この本を読み、中国共産党のこれまでの経緯について評価はしなくてはいけない。毛沢東と鄧小平の業績はやはり大きい。ただ、彼(著者)も何度も悔しさ(?)を交えて書いているが、毛沢東と鄧小平の"変わり身"が残念でならない。
「魅惑のミャンマー投資」
松田健/著
2008年6月10日
カナリア書房

ミャンマーが発展途上にあり、成長が見込まれるのは理解できる。また親日国で、犯罪が非常に少なく、信用もできるのは実際に自分も行ってみて知っている。資源国で担保能力が有ることや、契約書は基本は英語(ミャンマー語ではなく)というのも投資を呼ぶ込むことに有利だ。

しかし停電が日常茶飯事で、インターネットも自由に利用できず、かつ外国資本での貿易業は禁止されている(製造業などに限られる)、為替は公定レートと実勢レートで大きな差があり、さらに外貨建送金はできないという条件では、なかなか難しい。

法律は整備されておらず、規約・通達は頻繁に変わる。またそれは明文化されておらず、口伝で伝えられる...というのは日本企業にとって論外だ。同じものを作って輸出しているのに、月によって輸出が止められたり、賄賂が必要であったりというのでは、外国人が「参入しない」理由として十分かと思う。

一文一文は成立しているのだが、この本は文章としてまとまっていない。筆者がミャンマーが好きであることは分かるのだが....