2013年3月アーカイブ

「チャイナ・オデッセイ」
[ TO THE STORM
The Odyssey of a Revolutionary Chinese Woman]
楽熏雲(ユエ・ダイユン)/C.ウェイクマン=著
丸山昇=訳

「海も暮れきる」
吉村昭


大正時代の句人、尾崎放哉の小豆島での生活を描く。「記録小説」というジャンルを創った吉村昭が興味を持った句人というのでどのような人かと思い読み始める。島に着いてから死に至るまでのわずか1年。東京帝国大学を卒業し、保険会社の部長の要職に就いた主人公が、酒癖の悪さのために、徐々に社会の底辺に追いやられていく様子を淡々とした文調で書かれている。
こんな人が身近に居たら嫌だろうが...彼を受け入れるわずかな人の支えで生き長らえる様子がうまく書かれている。...いや、しかし、嫌いな人は嫌いだろう。
十五歳の義勇軍―満州・シベリアの七年
宮崎静夫
2010年12月/石風社

熊本の山村に住む15歳の少年が、満蒙開拓青少年団に志願し、故郷を後にする。「お国のために」という意識が特に高かったわけではない。母親が病弱で、兄弟は多く貧しい家庭で育った彼にとって、必然な選択だったのだろう。
茨城県での開拓団訓練を受けて満州へわたり、同様の境遇の少年達との共同生活を経て、戦争末期、満州義勇軍に17歳で入隊、一度も戦闘経験無いままわずか2ヶ月で終戦。兵隊ということもありそのままシベリアに抑留される。あまりにもひどい環境を乗り越え、7年後帰郷する。
彼の身を助けたのは「絵を描きたい」という信念だけだった。一度もそのような教育を受けたことも無く(と言うかそもそも小学校しか出ていない)、油絵も見たことすらないという環境の彼が、抑留中、そして帰国後も最底辺から這い上がっていく様がこの本の見どころ。

著者が過去を振り返って思い返す短編をまとめたものなのだが、文章が瑞々しく、著者のこれまでの長い人生の苦労、そこで出会った人達との関わり、ひたむきな性格がうまく出ている。