16スパイの最近のブログ記事

シルミド[実尾島事件]の真実
城内康信
2004年5月15日
宝島社
常岡さん、人質になる。
にしかわたく (絵), 岡本まーこ (著), 常岡浩介 (著)
2011/8/31
エンターブレイン
潜行三千里」 辻政信
2010年1月20日
毎日ワンズ
原著;昭和25年 毎日新聞社


10年くらい前に読んだマンガ、「虹色のトロッキー」を再読。 以前よりも更に面白く感じる。 安彦良和(ガンダムなど)はほとんど読んだことが無いが。

時代は1930年代後半。
舞台・出てくる地はハルピン、大連、伊寧、アルマアタ、牡丹江、興安街、黒河、ブラゴベチェンスク、上海、錦州、ノモンハン。

日本人の父とモンゴル人の母の間に生まれた主人公。幼いころに家族が殺された真相を掴むにつれ、人生の歯車が変わっていく。

亡命中のトロッキー(ウクライナ人。ロシア赤軍創始者だが粛清され、メキシコ亡命)を担ぎ出して満州国に招聘し、ユダヤ人社会を味方につけて対ソ戦争に利用しようとする勢力、それに反発するさまざまな勢力、協力する勢力の中を主人公は渡り歩く。敵・味方(実際はどちらかを敵or味方と単純にはくくれない)双方に魅力的な人物が居り、一気に読みきれる。


こういうフィクション漫画は、そのフィクション部分以外をどれだけ真実に近づけさせられるかで面白さが決まると言っても良い。まだ現存している人、家族など多くの人に取材したのが分かるこの話は文句なしに「面白い」。


日華事変前後の日本陸軍・海軍・満州国軍・興安軍・中共軍・ソ連軍・その他匪賊の勢力関係、中国東北地方の立地関係の知識が有ればより楽しめる。満州国軍とは別に活動していた「興安軍」の存在すら自分は知らなかった。



p.s.この話に出てくる人物で戦後も生き延びた人物が「辻政信」というのはなんと言う皮肉だろう。(戦犯になるのを避けて逃亡を続け、時効後にベストセラー作家、国会議員、そしてラオスに潜入し行方不明に
/ 「戦場特派員」 橋田信介
2001年12月20日実業之日本社

オホーツク諜報船」 西木正明 /著
1985年10月 角川書店/刊

ほとんどの日本人にとって、東西冷戦は非日常の世界で起こっていることであり、日々の生活では実感することは無かった。だが国境(日本政府は国境と認めていないが)に位置する根室~北海道東端~に暮らす人々、特に漁師達にとっては北方四島問題は非常に身近な問題で、日々の生活に大きな影響を与えていた。海を隔てて見える色丹島はロシア人が実効支配している。冷戦時代、漁に出た人がソ連の国境警備隊に拿捕される事件が頻発した。拿捕された人は、ソ連の刑務所に送られ何年間か抑留された。

だが、なぜかソ連に捕まらない船があった。ソ連が実効支配している海は荒らされていないので漁獲量は大きい。いつも大漁で戻ってきた人は富をなし、根室には"御殿"が何軒も立ち並んだ。そのような人はソ連に賄賂を贈ったり、スパイの手助けをしているのだと噂され、「ロスケ船」「レポ船(ロシアに情報をレポートする船)」と陰口をたたかれた。警察も取り締まろうにも現場を押さえられない。ソ連が実効支配している所に日本の警察が行くわけには行かないからだ。ベトナム戦争時には脱走米兵が密出国したとも言われる。

...そんな時に、千歳基地のアメリカ空軍情報将校が行方不明になる事件が起こった~



よく調べられてるなぁと思う。フィクションかとも思えるくらいだ。この本を書くにあたり著者は根室の漁師に混じって酒盛りをやり、レポ船員に張り付き、公安に聞き込みをし、北海道各地、シベリアをまわり、スカンジナビアまで脱走米兵に話を聞きに言ったという。昭和40年代の北の海の様子が良く分かり興味深い。


この話の主人公は、ソ連に拿捕された真面目な漁師。新婚だった彼が拿捕の5年後に釈放されて戻って来たとき、妻は他の男と駆け落ちしていた。そこから世界が動いていく。



追記:ソ連が崩壊して「レポ船」の価値はなくなったのだろうか。 今年2010年1月、国後島沖で日本漁船がロシア国境警備隊から銃撃を受けた。ロシアは「漁船が国境侵犯をした」と発表し、日本の外務省はロシア大使館に抗議をした。だがここで不可解なのは、銃撃を受けたことが分かったのは、漁船が帰航して時間が経ってからなのだ。漁船は銃撃を受けた穴を隠し、 GPSの記録を削除していたのだ。加害者ではなく被害者が事件を隠した。漁船員は「迷惑を掛けてるので、銃撃を受けたことは言えなかった」と謎のコメントをしたことが新聞の片隅に載っていた。新聞を読んだ時に引っかかっていたことが、この本を読んで少し分かったような気がした。



ウキペディアに「レポ船」の項目があった。さすが。[漁業]カテゴリになるんだ...
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%9D%E8%88%B9

昭和56年の警察白書に「レポ船」が絡む事件報告が載っている。ソ連だけでなく北朝鮮工作員も絡んでいる。「工作船」が日本海で活動していることを当時から警察は把握していたのだ。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/s56/s560800.html

この著者、どこかで聞いた名前だなぁと思ったら「夢顔さんによろしく」の著者だった。 これも面白かった。