「単騎、千里を走る」

白川道 / 2005年12月15日
チャン・イーモウの作品ということで映画を観たかったのだが、いまだ観ていない。出演者は知っているがあらすじは知らなかった。この本は映画の方が先に出来て、その脚本を元に小説化されたもの。「山の郵便配達」や「初恋の来た道」と同様に、シンプルだが味わい深いものだった。映画はきっともっとその傾向が強く出ているのであろう。

自分にとって意外で嬉しかったのが、舞台が雲南省の麗江であったことだ。2年前に訪れた時と同じく晴れ渡った空、旧市街の賑わい、ナシ族の住む郊外の静かな農村、切り立った崖のはるかかなたの山奥の村の様子などを思い出させてくれた。

この映画の公開は2006年。麗江が急にブームになったのはこの映画の影響もあるのだろう。
「猛女とよばれた淑女」
~祖母・齋藤輝子の生き方~
斎藤由香 / 2008年2月20日 / 新潮社

楡家の人々」を読んでから。
齋藤茂吉の妻、齋藤茂太・北杜夫の母である齋藤輝子の波乱に満ちた人生を孫が振り返る。資産家の娘として生まれ、山形から上京して来た茂吉と9歳で婚約、失火と戦災で2度無一文になる(火災保険も期限切れで莫大な借金を背負う)も堂々と生き、生涯50回以上の海外旅行を行う。戦前のヨーロッパ遊学、戦後の南米、ガラパゴス、ソ連(腸チフスで入院)、アフリカ周遊、エベレスト、南極まで僻地を中心に旅行する様子が興味深い。
「アメリカ生きがいの旅」
城山三郎 / 1987年8月10日 / 文春文庫
昭和60年前後のアメリカについてのルポ。
"日本"がアメリカに進出していく影響が現在と比較出来て興味深い。もちろん著者はそのようなこと全く想定していないのだが。シリコンバレーでのベンチャーと関わる日本企業、ロスの日本人街や老人ホームで生活する日系一世、寿司屋で成功する日本人、テキサス・ヒューストンで石油成金とビジネスする日本商社、テネシーの田舎の巨大工場で"日本車"を作ろうとする人達、ニューヨークで華麗に暮らすアメリカ人の孤独、アラスカでオーロラの研究を行う日本人。20年経って現在その人達がどうしているのかが気になる。


10年くらい前に読んだマンガ、「虹色のトロッキー」を再読。 以前よりも更に面白く感じる。 安彦良和(ガンダムなど)はほとんど読んだことが無いが。

時代は1930年代後半。
舞台・出てくる地はハルピン、大連、伊寧、アルマアタ、牡丹江、興安街、黒河、ブラゴベチェンスク、上海、錦州、ノモンハン。

日本人の父とモンゴル人の母の間に生まれた主人公。幼いころに家族が殺された真相を掴むにつれ、人生の歯車が変わっていく。

亡命中のトロッキー(ウクライナ人。ロシア赤軍創始者だが粛清され、メキシコ亡命)を担ぎ出して満州国に招聘し、ユダヤ人社会を味方につけて対ソ戦争に利用しようとする勢力、それに反発するさまざまな勢力、協力する勢力の中を主人公は渡り歩く。敵・味方(実際はどちらかを敵or味方と単純にはくくれない)双方に魅力的な人物が居り、一気に読みきれる。


こういうフィクション漫画は、そのフィクション部分以外をどれだけ真実に近づけさせられるかで面白さが決まると言っても良い。まだ現存している人、家族など多くの人に取材したのが分かるこの話は文句なしに「面白い」。


日華事変前後の日本陸軍・海軍・満州国軍・興安軍・中共軍・ソ連軍・その他匪賊の勢力関係、中国東北地方の立地関係の知識が有ればより楽しめる。満州国軍とは別に活動していた「興安軍」の存在すら自分は知らなかった。



p.s.この話に出てくる人物で戦後も生き延びた人物が「辻政信」というのはなんと言う皮肉だろう。(戦犯になるのを避けて逃亡を続け、時効後にベストセラー作家、国会議員、そしてラオスに潜入し行方不明に
「脱出記 ~The Long Walk~」
スラヴォミール・ラウイッツ 著
海津雅彦 翻訳
2005年9月10日初版 
株式会社ソニーマガジンズ
1941年ポーランド陸軍騎兵隊中尉だった筆者は、突然ソ連にスパイ容疑で逮捕される。そのままシベリア奥地の強制収容所に収容される。極寒の収容所で次々と仲間が死んでいく中、このまま死ぬよりはと、仲間6人で脱走する。
追手を撒きながら、シベリアのタイガ(針葉樹林帯)、モンゴルの草原、ゴビ砂漠、甘粛・青海の高山地帯、チベットの荒野、ブータンの山々を、すべて徒歩で越えてインドまでたどりつく。
インドでイギリス軍に保護されるまでの壮絶な記録。
大自然を生き抜く知識、国際情勢の知識、あきらめない意志のすべてを持ち合わせた者だけが生き残る。

1956年のイギリスのベストセラーの翻訳版。2004年に著者が亡くなってから、日本で出版された。

イラク自衛隊「戦闘記」
佐藤正久
2007年3月22日
講談社
イラクとの戦争が終わり、イラク中部のサマワに駐留することになった自衛隊。
多くの人の思惑、様々な矛盾をかかえ、イラクに向かう施設隊の隊長になった著者「ヒゲの隊長」の記録。
少し意外な経歴。自衛隊にもこんな人が居るのかと新鮮。
ただ、やはりこの人は特殊なのだろうなとも思った。
/ 「戦場特派員」 橋田信介
2001年12月20日実業之日本社

「マスード」 長倉洋海
2001年11月 河出書房新社

アフガニスタンの英雄マスード将軍。カブールの豊かな家で育ったが、ソ連の侵攻に伴い武装勢力を率いて山に篭りソ連と戦う。誰とでも気さくに接し、日本を含め海外にファンも多かった。ソ連撤退後の混乱の中、彼はタリバンとも戦い自由を目指したのだが、アラブ人のテロに遭って亡くなる。ジャーナリストを名乗る男の質問に応えているとき、ビデオカメラの中に仕掛けられていた爆弾にやられたのだった。

彼が亡くなったのは2001年9月9日。あのアメリカでの同時多発テロのわずか2日前だった。

その後の世界の流れは周知の通り。反タリバン勢力は散り散りになり、タリバンとアルカイーダは勢いを増した。アメリカはタリバンとアルカイーダ掃討を目指してアフガン・イラクに侵攻した。だが未だに平和は訪れていない。
/ 「不肖・宮嶋inイラク―死んでもないのに、カメラを離してしまいました。」
宮嶋茂樹/著
2003年7月 アスコム/刊
著者の代表作(写真集として)になるのでは。さすがだ。カメラマンという肩書きを利用したエッセイストではと思えるくらいの著者だが、今回は命を張っての写真にただ感心する。イラクやアメリカ兵の写真よりも、市民が略奪している写真の方が印象深い。注釈もなかなか気が利いている。
「落陽の市街図~青春への北帰行」
宇田博/著
1990年10月25日
六法出版社

満州で学生時代を過ごした日本人が、40年ぶりに中国東北部を旅をする。
終戦後の混乱時の人間関係/裏切り・友情が蘇ってくる。真実は~。
「ロンドンひとり暮らし」 中野左知子/著
2002年12月15日 文芸社/刊

イギリスの大学に留学した日本人女の子の体験記。
率直な感想が自分の文章で、短編形式で書かれている。
イギリスに留学していた人が、「論文(エッセー?)を提出しなければ」とよく言っていたのを思い出した。この著者もそれで文章を書く事を鍛えられたのではないだろうか。各章ごとうまくまとめられ、簡潔な文章ばかりだが推敲を繰り返して書かれているなと感じた。
オホーツク諜報船」 西木正明 /著
1985年10月 角川書店/刊

ほとんどの日本人にとって、東西冷戦は非日常の世界で起こっていることであり、日々の生活では実感することは無かった。だが国境(日本政府は国境と認めていないが)に位置する根室~北海道東端~に暮らす人々、特に漁師達にとっては北方四島問題は非常に身近な問題で、日々の生活に大きな影響を与えていた。海を隔てて見える色丹島はロシア人が実効支配している。冷戦時代、漁に出た人がソ連の国境警備隊に拿捕される事件が頻発した。拿捕された人は、ソ連の刑務所に送られ何年間か抑留された。

だが、なぜかソ連に捕まらない船があった。ソ連が実効支配している海は荒らされていないので漁獲量は大きい。いつも大漁で戻ってきた人は富をなし、根室には"御殿"が何軒も立ち並んだ。そのような人はソ連に賄賂を贈ったり、スパイの手助けをしているのだと噂され、「ロスケ船」「レポ船(ロシアに情報をレポートする船)」と陰口をたたかれた。警察も取り締まろうにも現場を押さえられない。ソ連が実効支配している所に日本の警察が行くわけには行かないからだ。ベトナム戦争時には脱走米兵が密出国したとも言われる。

...そんな時に、千歳基地のアメリカ空軍情報将校が行方不明になる事件が起こった~



よく調べられてるなぁと思う。フィクションかとも思えるくらいだ。この本を書くにあたり著者は根室の漁師に混じって酒盛りをやり、レポ船員に張り付き、公安に聞き込みをし、北海道各地、シベリアをまわり、スカンジナビアまで脱走米兵に話を聞きに言ったという。昭和40年代の北の海の様子が良く分かり興味深い。


この話の主人公は、ソ連に拿捕された真面目な漁師。新婚だった彼が拿捕の5年後に釈放されて戻って来たとき、妻は他の男と駆け落ちしていた。そこから世界が動いていく。



追記:ソ連が崩壊して「レポ船」の価値はなくなったのだろうか。 今年2010年1月、国後島沖で日本漁船がロシア国境警備隊から銃撃を受けた。ロシアは「漁船が国境侵犯をした」と発表し、日本の外務省はロシア大使館に抗議をした。だがここで不可解なのは、銃撃を受けたことが分かったのは、漁船が帰航して時間が経ってからなのだ。漁船は銃撃を受けた穴を隠し、 GPSの記録を削除していたのだ。加害者ではなく被害者が事件を隠した。漁船員は「迷惑を掛けてるので、銃撃を受けたことは言えなかった」と謎のコメントをしたことが新聞の片隅に載っていた。新聞を読んだ時に引っかかっていたことが、この本を読んで少し分かったような気がした。



ウキペディアに「レポ船」の項目があった。さすが。[漁業]カテゴリになるんだ...
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%9D%E8%88%B9

昭和56年の警察白書に「レポ船」が絡む事件報告が載っている。ソ連だけでなく北朝鮮工作員も絡んでいる。「工作船」が日本海で活動していることを当時から警察は把握していたのだ。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/s56/s560800.html

この著者、どこかで聞いた名前だなぁと思ったら「夢顔さんによろしく」の著者だった。 これも面白かった。
「パリ ノ ルール」 ~PARIS "NOUVEAU" GUIDE~
株式会社メディアファクトリー 2006年改訂版
いわゆるフランスっぽい、パリのガイドブック。
>
「金持学」 ~年収3000万円以上をめざすアナタのための成功哲学
関口房朗
2004年1月5日
宝島社

成金(←自分で言っている)が書いた、自分を自慢する本。
「技術者派遣業で財を成し、競馬でイッパツ当てた著者が、半生を振り返る話」なのだが、既にこの会社は破綻...こんなジェットコースター人生も良いなと思える...たぶん。著者にはまた何かやってもらいたい。
「私の戦争日記」~インターネットでのよびかけ~
カタリーナ・ブガルスキー/著
2001年 ケイ・アイ・メディア

アメリカに留学していたユーゴスラビアの高校生の女の子。帰国後ユーゴスラヴィアは内戦状態に。NATOに所属するアメリカ軍が自分の住む町(ベオグラード)を空爆する。空爆下、女の子はアメリカに住む友達に電子メールを書く。そのメールはインターネット上に転載されて...
「草の海」
椎名誠
1992年1月256日 集英社





ラストコーション

「上海リリー」
胡桃沢 耕史
文芸春秋 1993年5月

「lust caoution」とそっくりじゃないか、 と思ったがこの本の方が映画より早かった。
上海が"魔都"だったころの話。

ところで、この話のどこまでが実話でどこからが脚色なのだろうかと調べてみたら、結構実在の人物が多いのに驚く。 きっとこの人がモデルなんだろうなぁと思われる人も居たり。上海ではありふれた話なのか?
藍衣社は有名だが、 ジェスフィールド76号、そして 丁黙邨(lust cautionでは主人公?)も実在するとは。全然、秘密結社じゃないじゃん。 いや誰でも知っているが、誰も存在に触れてはならない存在だったんだろうけど。

「炎熱商人」 深田祐介
文芸春秋 昭和57年5月30日刊

総合商社の在フィリピン支社に出向することになた木材商社の社員を中心に、フィリピンと日本との関係を描く。個性的な(ステレオタイプで没個性的とも言えるのだが)日本人とフィリピン人の登場人物達の対比する書き方が良く、惹きつけられる。
フィリピン人の父と日本人の母との間に生まれた少年が太平洋戦争に巻き込まれていく件が良い。

世界に進出する日本人、特に高度成長期のビジネスマンの姿を巧く描いており、海外に赴く日本人にとって参考になる部分があるのではないか。

日本、アメリカ、スペイン、そして土着の文化が接していて交じり合ってはいるが、どちらでもない複雑な関係、フィリピンを理解するのに良い。この本はもちろんフィリピンについて書かかれているのだが、実は"日本人とは"について書かれているのかもしれない。
「散るぞ悲しき」 ~硫黄島総司令官・栗林忠道~
梯久美子 新潮社 2005年7月30日刊

数年前の映画で再びブームになった感が有る硫黄島の戦いについてまとめた一冊。有名になった子供に宛てた絵手紙などを観ると改めて、彼が異色の軍人であったことが分かる。 最期の決別電報が実は、参謀本部が改変して発表していたことを知る。
「ラーメン屋成功論」
豆田敏典
2008年11月22日
㈱コトコト 版

「来来亭」を初めて知ったのは7~8年前。滋賀に住むOと車に乗っているとき夜食を食べに店に行った。「ここの社長、えらい儲けてるで」とのことだった。
背油たっぷりのラーメンは美味しかった。その後も2・3回、店に行ったことが有る。

今年京都に行くことがあり、帰り道に膳所店に寄った。えらい親しみやすい店員が、会計のときに言った。「これ、うちの社長が書いた本なんですけど、良かったら買ってもらえません?定価1200円なんですけど、買ってくれたら1200円分のラーメン券差し上げますんで」

家に戻りその買った本(貰った本?)を読んでいる時、テレビをつけた。
「バリバリバリュー」で社長(著者)が出ていた。野洲にある社長の豪邸だった。


滋賀県も何だか変わったような気がした。

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