いつか旅する人へ
勝谷誠彦
1998/9潮出版社
最後の冒険家
石川直樹 2008/11/21
集英社
気球に乗って太平洋横断を試みた神田道夫氏を描く。彼の"最期の冒険"を最も近くで見ていた著者の、飾らない文章が良い。
神田氏は埼玉県の町の地方公務員だった。最後の役職は給食センター長。有休を利用して気球に乗る。

仕事が終わって家に帰り日本酒を1杯だけ飲みテレビの時代劇番組を見るのが好きな、見た目はあまりにも普通の"おじさん"だが、気球にかける情熱はすごく、熱気球の滞空時間や飛行距離世界記録を持っていた(現在は塗り替えられている)。

高校の時に家の近くを流れる荒川の川下りから始まった彼の"冒険"は、30歳で気球と出会ってからは気球一辺倒となる。富士山越えに始まり、本州横断、東シナ海横断、ヒマラヤ越えと突っ走る。
彼はあまりにもプラス思考(気球に関してだけ)だった。失敗することは考えない彼の最期の飛行は、傍目には無謀なものと映っていたが、彼は恐らくそうとは思っていなかったのだろう。 知る術は無いが。

地球上に人類未踏の地がほとんどなくなった現代の"冒険"は、ルートや方法を変えたりといったものになっている。例えばエベレストには既に多くの人が登っているので、いかに早く登るかとか、誰も通ったことの無いルートで登るとか、無酸素で登る、などだ。"現代の冒険"はその冒険をする者の自己表現の場なのだ。
そう考えると、彼の最期の飛行「自作の気球で太平洋横断」はかなり創造的なものだと言ってよい。藤で出来た籠で、ジェット気流に乗って高度1万mの上空を飛んでアメリカまで行くと言うのは誰も経験していない。しかし酸素も薄く気温は-50℃、そして飛行中はずっと眠れないという環境を耐えられるものなのだろうか。成功は約束されていない、むしろ失敗に終わるのが予想されるものだった。

彼と一緒に一度は太平洋横断飛行を試みた(そして失敗、嵐の太平洋上で着水して九死に一生を得た)著者の、神田氏への思いが詰まった一冊。でも著者は彼の事を賛美しているわけではない。無駄な形容が無い文体、起こった出来事を淡々と書き連ねる文体が良い。
往復書簡
湊かなえ
幻冬舎 (2010/9/21)

はるかなるアフガニスタン
アンドリュー・クレメンツ (著)
田中 奈津子 (翻訳)
講談社 (2012/2/29)
漂流記の魅力
吉村昭
2003年4月10日
新潮新書
シルミド[実尾島事件]の真実
城内康信
2004年5月15日
宝島社

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イスラム飲酒紀行
高野秀行
2011/6/25
扶桑社

飲酒を禁じられているというイスラム教の国で、酒好きの著者が、何としても酒を飲もうと悪戦苦闘する話。
最後まで読むと付く。イスラム教成立時では"酒を飲んではいけない"なんて定められていなかったという事を。
「ワンちゃん」
揚逸
2008年1月10日/文藝春秋

中国人が芥川賞受賞ということで話題になった作品。
著者自らの体験を活かして書かれた短編小説。話の大きな展開は無い、一言で言うと素朴な感じの文章なのだが、それが主人公の性格をうまく描いているのかもしれない。
正直、大きな感動は得られないのだが、いやそれが良いのかもしれない。

沢木耕太郎

登山家の山野井泰史のギャチュンカン(ヒマラヤ)北壁登攀の記録。この登攀数日間は彼の生き方を体現していると言って良く、そこに至るまでの彼の人生を紹介しながら、クライマックスである登頂後の2日間の場面までどんどん引っ張っていく著者(沢木耕太郎)の筆力がすごい。
もちろん書かれているのは、人並みはずれた山野井夫妻の生命力。空気の薄い標高7000mの高さにある、高さ1000mの壁を這い登る二人に吹雪と雪崩が襲い掛かる様子。夜は岩にハーケンを打ちロープを張ってぶら下がって眠る二人は、食欲が無くなり、目が見えなくなり、凍傷で指先が次々やられていく。これは記録小説なのだが、沢木耕太郎の作品にしては珍しく読後の高揚感有り。ギャチュンカンのベースキャンプに行ってみたいと思った自分は変なのだろうか。
戦場のニーナ
なかにし礼
講談社
2007/1/30

天皇の密使
丹羽昌一

メキシコ革命(1914年)のことを知らずに読んでも楽しめる。元外交官が書いたミステリー&アドベンチャー&外交裏事情小説(?)。
題材となる日本人外交官が実在したようで、どんなものなのか面白い。国家間ではなく外交官からの現地報告のような外交資料を基に、こんな小説が書けるというのも面白い。
無鹿 (文春文庫)
遠藤周作
2000年5月
文芸春秋

遠藤周作の短編のような取材日記
高校時代に朝日新聞の配達のアルバイトをしていたのだが、ちょうどその頃に、この「本多勝一集」が朝日新聞社から発売された(これとは関係ないが実家では毎日新聞を購読していた)。

全30巻で2ヶ月に1巻づつ5年間かけて出版という壮大なもので、価格も1冊あたり4000円と高校生にとってはなかなかきついものだったが、興味には勝てず購入した。既に文庫本で20年前に出版されていたなんてインターネットの無い当時は気付かなかったのだ。

ただ、この1冊のボリュームはすごかった。2ヶ月あっても読みきれないくらい。いや、読みきれなかった。その後の自分の思想に影響を与えた本だと思う。

零下20℃でアイスクリーム
森千草
1995年4月10日
フジテレビ出版
ナツコ 沖縄密貿易の女王
奥野修司
2005年4月 文芸春秋
2007年10月文春文庫
太平洋戦争後の混乱時、アメリカ統治下だった沖縄。最西端の与那国島は、台湾との密貿易で栄えていた。
戦争の被害が大きく物資が不足していた沖縄へ台湾から大量の闇物資が運ばれていた。沖縄からは日本本土へ。南国の食品、砂糖や米、ペニシリンなどの医薬品など。
香港やマニラで買い付けられた商品は、中国商人と台湾やマニラ在住の沖縄人の人の手で台湾を経由して与那国島に運び込まれた。 与那国でもまれにアメリカ軍や琉球政府官憲による摘発も有ったのだが、一大勢力を誇った闇勢力を抑えることは出来なかった。
戦争の被害で何もかもない沖縄、そして日本本土。物はなんでもかんでも売れた。支払は現金が無ければ、戦争に使用された砲弾、鉄くず。
与那国島の港には次々と物資が運び込まれる。小さな島には日本各地から運び込まれた現金があふれた。島の人々は札束を持って歩くようになった。比喩ではなく本当に。島の中学生が学校を終えて荷揚げのアルバイトを数時間するだけで、当時の日本人の平均月収以上の収入を得た。島には次々と家が建ち人口が膨れ上がったのだが、その隆盛は戦後数年の混乱が終わると無くなった。

当時のこの状況を実際に経験した人はもう少ない。"密貿易"だけにその事実を記録する文書や写真も少ない。でもその事実まで誰の記憶からも消えてしまうとは...もったいない。面白い話なのに。
狗神
坂東 眞砂子
平成8年12月 角川文庫
進々堂世界一周 追憶のカシュガル
島田荘司
2011年4月
新潮社
赤い月〈上〉
赤い月〈下〉
なかにし礼
2001年4月
新潮社

著者の満州での幼少期に体験を下に書かれて私小説だが、主人公は母だ。 よくある「戦争の悲惨さ」だけを描いたものではない。著者の母の特異な過去をモチーフに、母の強さを描く。
上海メモラビリア
草思社
2003/5/22


1990年代末、急速に発展する上海で過ごす庶民の姿、"旅行"で訪れただけでは気付かない、人々の心の内を、上海で生まれ育った筆者が瑞々しい文章で描く。
僕の島は戦場だった 封印された沖縄戦の記憶
佐野眞一
集英社インターナショナル
2013/5/20
戦国廃城紀行---敗者の城を探る澤宮優
2010/1/22
河出書房新社

戦国で廃城ということで自然と近江についての記述が多くなる。八幡山城についての記述も前回(2000年)の発掘の結果に基づいて書かれていて、信頼できる。紀行文だから当然だが、著者が訪問した時に感じた事と、彼の知識(そんなに深いものではないのだが)がシンクロしていて良い。
この本を読んだ後に近江八幡に帰省したのだが、ちょうどたまたま著者の講演会が行なわれていた。著者は歴史の専門家でもないのだが、"廃城専門家"としてこれから有名になるのかもしれない。
廃墟探訪
中田薫
2002/10/29
二見書房


潰れたホテルなどを巡る写真集で、ざっと流し読みをしたのだが、最後に掲載している埼玉県の農村にある古民家だけは本当に怖かった。建物だけでなくこのような来歴を調べると怖さは倍増する。呪われた家庭としか言いようの無い、実話だけに怖い。
沖縄・奄美《島旅》紀行 (光文社新書)
斎藤潤
2005/7/15 光文社文庫
「日本の国境を直視する」
山本 皓一
2012/9/26 KKベストセラーズ
与那国沖 死の漂流
~わが青春の闘い~

伊良皆高吉
ボーダーインク/出版

1952年、与那国島在住の20歳の若い中学生教員であった著者が、石垣島からの帰路に乗った貨客船が転覆、台湾(国民党)軍船に救助されて生還したことの体験記、及びその後の人生を振り返って書いたもの。
当時アメリカ領だった沖縄での事件で、日本(本土)ではあまり知られていない貴重な記録。また著者の父親も戦争中に同じように船が転覆、今になって注目を浴びている尖閣諸島で衰弱死したという稀有な繋がりも有る。

事件後教員を辞めた著者は日本へ出国、早稲田大学で学び、日本のカップラーメン会社に就職する。退社後に沖縄に戻り、日本からカップラーメンを輸入する商社を設立する(当時は沖縄は日本ではない)。日本復帰後は沖縄県会議員、現在は三線奏者。
自伝にありがちな、良い部分しか書かれていないようなきらいは有るが、珍しい体験をしておられるのは事実。興味深く読んだ。
加治隆介の議
弘兼憲史
講談社
1991~1998年

10年以上ぶりに読む。小選挙区制、カンボジアPKO、APEC大阪会議など、当時を思い出す。選挙制度や各政党の議員数も現在とは大きく違う。その当時まで55年体制が延々と続いていたのが今となっては信じられない。
常岡さん、人質になる。
にしかわたく (絵), 岡本まーこ (著), 常岡浩介 (著)
2011/8/31
エンターブレイン
フンザに暮らして
山田純子/著
2001/10
石風社

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