
中国側の国境の建物は高校の体育館って感じ。
並んでいるのは大きな荷物を持ったロシア人ばかり。
荷物は1m * 1m *1mくらいのダンボール。
電化製品少しと大量の衣料品。
出国審査は少し時間かかる。
イミグレの係員(公安ではなく警察の腕章を付けている)が「日本人?」と鬱陶しそうな声で尋ねる。
近くに居た公安(茶色の制服)が走ってくる。
何か尋問されるのかと思ったら、「ハロー、ジャパン?」と笑顔で聞いてきた。
どうやら英語が使えるんだぞと見せ付けたいらしい、20代前半の若い男の子だ。
こんな無意味な通訳(?)を付ける必要は無いのだが、親切にしてくれるのでこっちも笑顔で応える。
イミグレの職員は不機嫌そうにパスポートを返した。
中国を出国し建物を出ると、そこには大きな河「松花江(アムール川)」が有る。
まだ完全に凍っていて真っ白だ。
対岸までは1km弱くらい。向こうの様子が肉眼で見える距離だ。
この氷の上をバスで移動する。
夏に利用すると思うジェットフォイルは打ち揚げてあった。
バスは北朝鮮のバス(ハングルの行き先表示がそのまま)や、古いロシア製のボンネットバスだ。
「ブラゴベシェンスク!?」と大声で聞いたら、バスの運転手が「ダ-!ダ-!」と答える。
行き先表示版には「Амул Транзит(アムールトランジット)」と書かれていた。
バスの中では僕は思いっきり目立っていた。
同い年くらいの乗客が握手をしてくる。
中学校で習う程度の英語を話せる男の人が、乗客を代表して僕に話しかけてくる。
車の話題が多い。
「トヨタを知っているか?」-「もちろん」
「ニッサンサニーに乗ってる」-「それはすごいね」
その中に空手をやっている人が居た。
「私はクロオビを持っている」と言われて驚いた。ロシア人に習っているらしい。
意外と日本のことが知られている。断片的にだが。
出発前に中国の公安が2人乗り込んでくる。
僕に目をつけ、何事かを中国語で話しかけてくる。
バス中のロシア人が「イポーニー(日本人!)」と答えると、
公安はホーと言って僕のパスポートをチェックする。
なぜか隣に座っていたロシア人だけ、同じようにパスポートもざっと調べた後、
バイバイと言って公安はバスを降りていった。
大量の荷物を積んだ北朝鮮製のバスは意外と快調に氷の上を走る。
普通の道と変わらない。氷の上ならどこでも走って良いというわけではなく、
"道路"が決められている。そこには「70km」「2t」と交通標識も刺さっていた。
この時点(3月)ではとても時速70kmなんて出せる道ではないのだが、凍り始めた頃は
氷は平らでもっとスピードが出せたのかもしれない。
出入国の間は写真撮影が禁止。
川の上をバスが走る光景はなかなか面白いと思うのだが、残念だが写真は無い。
バスを降りる時には運転手が、サインしてくれと手帳を出してきた。
名前を漢字でもっともらしくかくと握手を求められた。
なんなんだ?ここは。
ロシア側の建物は中国側より古いのだが、大きい。
X線の荷物チェックを受けた後、イミグレ。
係員は非常に親切で、並んでいるロシア人を押しのけて、なぜか僕に先に行けと言う。
並んでいるロシア人も笑顔。不思議な気分だ。
僕だけ職員3人がかりでチェックされる。ビザの残りが短いけど大丈夫なのかと聞かれる。
どこへ行くのかという質問にシマノフスクと答えたら、
招聘状は発行地がモスクワになってるじゃないかと突っ込まれる。
僕のパスポートやビザには招聘状のことは書かれていないので驚く。
そんなデータまで登録されて、こんな辺境までオンライン化されていているのか。
「いやモスワクにも行く予定だったが、ビザの有効期限が残り僅かなのでシマノフスクへだけ行く事にした」
と答えると、疑わしそうに見らはしたが、入国印を押してくれた。
東京のロシア大使館が作成した入国カードは必要無かった(ここ独自のカードに記入した)。
入国審査すぐに「移民登録所」と漢字で書かれたブースが有り、滞在登録をすることが出来た。ロシアでは外国人は、どの都市でも訪問3日以内に、オビールと言われる内務省管轄の役所にて滞在登録が義務付けられている(大きなホテルではフロントで代行してくれる)。今回はホテルに泊まることも無いので、こんな所で登録することが出来て助かった。
税関でさらにX線調査。荷物をあけられることも無くすぐに終わる。
そこをすぎ、建物を出るとそこはいきなり「ロシア」。
川の向こうの中国の町並みからいきなり、東ヨーロッパの田舎町に放り出されたのだった。