2012年6月アーカイブ

坂本温泉の後は、東温泉へ向かうためにこれまで来た道を逆戻り、集落手前の道を東へ。
相変わらず人気(ひとけ)が全く無い。



硫黄岳を左手に見ながら約2時間。やっと潮の音が聞こえてきた。岩場に釣り人が一人居た。「←東温泉」の小さな道標にそって歩く。


あの坂を下りれば東温泉が、という所で車が追い越していった。車からは船に居た家族連れと、その3人が泊まっている民宿の主が居た。「すぐ帰りますので、風呂に入るのちょっと待ってください、ごめんなさい」と言われる。大丈夫ですよ。
なるほど、ここで人が居るのに裸になるのは勇気が居る。


ここが更衣スペース?


自分と同じくらいの歳の女性と、その両親。女の人の話し方が懐かしい話し方だったので「大阪の方ですか?」と尋ねると「あ、いえ、神戸です」。確かに大阪と神戸は全然違う。(自分は千葉に住んでいるが"東京の人か?"ときかれたらたぶん否定しないだろう)。自分が出身は滋賀だと言うと、母親は滋賀県の甲賀だと応えられた。
この3人にとっては、こんな所まで一人で来る人は珍しかったのかもしれない。「調査ですか?」と尋ねられた...

温泉の浴槽(?)は3つ有り、上のものほど熱い。たまに波が入ると冷やされて人が入れる温度になる。民宿の人が「ちょっと今日は波が有るけど、まぁ人をさらっていくほどの高さではないな」と、なんだか怖い事を言う。


3人は言ったとおり、数分で帰っていったので、「さてと」と、おもむろに服を脱ぐ。誰も見ていないのだが、一応水着で。この短パンは水着なのだ。

たまに高い波が来ると、温泉に海水が入る。長時間入っていられる温泉だ。天気が良ければだけど。夜も危険だ。温泉も、ここまで来る道も全く明かりは無い。懐中電灯だけだと難しいと思う。


目の前は一面の雄大な大海原。すごい迫力。
水深はたぶん深い。波も力強く、岩場しかなく、海には入れない。


硫黄島(鹿児島県三島村)には、孔雀(クジャク)が居る。
動物園やサファリパークではない。森の中に居る...のだが、集落の中の生活道路でも普通に歩いている。おとなしいと言うか、人を恐れていないと言うか、悠然と歩いているのだ。近づいて写真を撮ろうとすると、羽を広げたり大きな鳴き声で威嚇する。

孔雀は硫黄島に古代から居る...のではない。それだと面白いのだが。
バブル時代にヤマハが硫黄島でリゾートを開発した。そのリゾートホテル内で飼われるために孔雀は連れてこられたのだが、バブル崩壊とともにリゾート計画は破綻、孔雀は野に放たれたのだ。

天敵の居ない外来種が、自然界に放り出されたのだから生態系は崩れるはずなのだが、現在のところ表立った影響は無いようだ。孔雀は雑食で、数が増えているという事は食べ物にも困ってはいない様子。畑が荒らされて困る、畑にはネットをしているという声を島のおばあさんから聞いたのだが、駆除をすると言うわけでもないようだ。"美しいもの"って得というのは人間界だけではないのだ。


そのおばあさんから興味深い話を聞いた。
ヤマハリゾートが撤退するとき、孔雀だけではなくホロホロ鳥も放たれたとの事。しかし現在、硫黄島にはホロホロ鳥は一羽も居ない。ホロホロ鳥は長距離は飛べないし泳げないから、他の島に行くことは無い。
「自然淘汰されたんですね」と言った僕におばあさんは言った。
「あれは美味しかったからね」。
え??


(森の中でも出会った)
硫黄島には小中学校が有る(三島小中学校)。村立で、小学校と中学校が併設されている。
現在は小学生13人・中学生8人と、全人口108人の離島にしては在校生数は多い(と思う)。これはしおかぜ留学制度という本土からの"留学生"を受け入れる制度を利用して島外からきている生徒が居るからだ。以前に訪れた鳩間島小学校でも里親制度が有ったが、このような制度を採る過疎地の学校は結構多いようだ。様々な理由(都会ではなく大自然の中で子供時代を過ごさせたいというケースも有るだろうし、不登校問題なども絡んでいるかもしれない)で、都会から子供はやってきている。
三島村では食費を含む全費用9万円/ヶ月のうち、5万円の補助を出しているので保護者の負担は4万円/ヶ月だ。もちろん子供だけでなく家族全員で移住してくるのも歓迎されるだろう。仕事がなかなか難しいが。起業家・SOHOのやる気の有る方はぜひ。


教員は用務員・保健要員なども含めて10人以上。児童生徒一人当たりの教員数はかなり多い。いじめなどが起こる可能性は少ない。子供を育てる環境としてはかなり恵まれているのではないだろうか。



校門前でクジャクとすれ違った
運動場は芝生だ。南国は良いなぁ。
硫黄島が見えてきた。噴煙が上がっている。平安時代に"鬼界ヶ島"と呼ばれたのも分かるような気がする風景。昔話に出る鬼が島はこんな感じだろうか(鬼界ヶ島は現在の喜界島の事ではという説もある)。


硫黄島の周囲の海底は複雑な地形をしている。 硫黄岳自体も活火山だが、周囲には他にも火山が多くある。カルデラが海底に有るのだ。喜界カルデラ」については詳しいページで調べるとして、硫黄島に向かう船「みしま」の船上から景色を楽しむ。

近づくと海の色が明らかに異なる部分が有るのが分かる。この水色の部分の水はアルミニウムが含まれているとの事。


港に入ると明らかに色が違う。堤防の部分ではっきりと分かれている。もちろんこの赤茶色は硫黄が混じっているからだ。


湾内は完全に赤茶色。写真は接岸作業中、船から撃ち投げられたロープを結び付けているところ。
島の人に聞いたところ、堤防が出来るまでは砂浜も有ったらしい。その頃は海がめも産卵に来ていたとのこと。堤防が出来てからは水が回流しなくなり、湾内から出る硫黄が溜まっていてこの色になったとの事。このあたりは掘ればどこでも温泉は出ていて、湾内には局地的に水温が高い場所もあるらしい。

後方に見える山は稲村岳。3000年前に爆発した死火山、現在は緑に覆われている。
硫黄島には店がほとんど無い。雑貨屋が3軒有るとの事だが、よそ者には分かりにくい(笑)。この店にもジュースや調味料などが売られていた。店員は...居ない。
夕食を民宿でとっている時にこの事を話した。「店が分かりにくいですよね」と言ったら、おばさんは笑って言った。「うちも雑貨屋をやってたんだけどね」。全く気付かなかった...
最近は生協が普及したので、島内でモノの売買をする事はほとんど無いと言う。欲しいものが有れば鹿児島の店に電話かFAXで注文すると、次の船で運ばれてくると言う。「鹿児島の店に値段では太刀打ちできないよ」との事。当然だ。

物流はどうなっているのか不思議だ。千葉の郵便局には、「小笠原諸島(父島・母島)へ荷物を送る場合は船の運航日を考慮して差し出してください」といったポスターが張ってある。硫黄島はどうなっているのか。

鹿児島港で荷物を積む
手続き中の佐川職員



荷物を降ろす島民


手荷物は直接自分で下ろす

週に3回の"行事"?
島には郵便局は有るが、ゆうぱっく、ヤマト運輸、佐川などの配達は無いという。荷物は船から降ろされるので、港まで受取に行く。

住所も書かないで良いのかと不思議に思ったが「鹿児島県硫黄島・○○様」で届くとの事。全員の顔を知っているから問題ないという。本当だろうか。

では例えばヤマト運輸で本州から硫黄島宛に荷物を発送したらどうなるのかと思ったが、これも同じ事で、ヤマト運輸の仕事は鹿児島港で村営フェリーに荷物を預けるまでで、受取人は硫黄島の港で自分で船から受取るようだ。


船から荷物を降ろすのは手作業だ。船は村営だから、乗組員は村の公務員だ(このおばさんの息子さんも船で働いているという)が、荷役は島民の持ち回りだという。"ボランティア"というよりも、"自分の事は自分で"といった感じだ。


それにしてもどんな小さなものも通信販売で買わなければいけないし、それが届くのも数日後という生活はなかなか大変だろうと思う。この民宿のおばさんは、島で生まれたが大阪で就職して住んでいたというのでその点を尋ねてみたのだが、「すぐに慣れるよ。島ではお金も使わないし、みんな結構貯金を貯めてるんじゃないかな」とのことだった。
鹿児島に戻る船で大きな荷物が運ばれていた。
島で育った牛だ。


三島村(黒島・硫黄島・竹島)へは村営フェリーのこの三島丸で行く。週3便の不定期航路。書店で販売されているJTB全国時刻表には載っていない。運行ダイヤは三島村のサイトで確認する。



船賃は2等で3500円。島民が島内から往復で買えば1割引の制度が有るが、旅行者には関係ない。船の切符は出発前に乗り場で買う。満員で乗れないと言う事はまず考えられないので、団体で無い限り普段は予約は不要 (定員は200人、この日の乗客は30人くらいか)。


荷物を積み終わったら出航。
通常ダイヤだと鹿児島を朝9時30分に出て、竹島に寄ってから硫黄島には13時15分着。この日は晴れていて風も強くなく、錦江湾を出てからもおだやかな航海だった。


乗客が少ないので船内は広々としている。普通のフェリーだ。
冬と比べたら夏は人が多いけど、イベントがある時以外は特に混みあう事も無く、いつもこんな感じらしい。大赤字だろう。以前に"としま丸"に乗った時も聞いたが、村営で国からの補助金で成り立っている(詳細は村のサイトに載っている)。



左) 公衆電話と雑誌が少々。島にはもちろん書店は無い。
中)学校や発電所などの荷箱。届ける荷物・書類などはここに入れる?
右) 行政や学校からの案内が壁に貼ってある。



村には医師が一人。病院は無い。一人の医師が3つの島を巡回している。船の中の診療所が唯一の病院だ。各島に看護婦は居るので応急処置は出来るし、硫黄島には飛行場が有るので緊急時には鹿児島へヘリコプターか飛行機で搬送は出来るのだが、病気の人はやはり不安だろう。

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