2017年10月アーカイブ



江戸時代後期に世界一周をした尾張国の14歳の少年"音吉"。彼の存在を自分が知ったのは約10年前。 シンガポールの墓地に眠っていた彼の遺骨の一部が、彼の故郷愛知県の墓に戻ってきたことを報じる記事をみたからだ。

アメリカでインディアンの捕虜になり、カナダ人に助けられてハワイ、南米を経由してイギリス、アフリカ、シンガポール、マカオを経由して日本に戻ろうとするが、幕府に上陸拒否され船を砲撃される。その後イギリスに帰化、シンガポールで会社運営、死去。マカオでは世界初の日本語で聖書を発行。

現代の人々には全く忘れられていた彼の存在を有名にしたのが、音吉の故郷の愛知県知多郡在住の人達の行っていた遺骨帰国運動なのだが、それについて書かれた記事が今週の日経朝刊の文化欄に載っていた。

当時"町長"だった彼は退職後の今も、音吉顕彰会の代表としての活動を続けているとの事。これからもまだ新しい発見が有るかもしれない。ごく限られた人しか関心の無い事かもしれないが、このような"興味を持った普通の人"の活動に期待する。
天売島で泊ったゲストハウスには、島の高校に通う高校生が二人住んでいた。島出身の生徒だけでは学校が維持できないから、北海道天売高等学校では島外から島留学の生徒を受け入れているのだ。

天売高校の生徒数は全校で5人。そのうち2人が彼ら島外からの生徒だ。義務教育の小中学校では児童・生徒1人という学校も有るが、義務教育ではない高校でこの規模というのはほとんど無いと思う。

天売島・ 焼尻島ともそれぞれ小中学校は有る(そしてどちらも児童数人しか居ない)が、高校は天売島にしかない。船で渡った羽幌の街には高校は有るのだが、島からの通学は出来ない。

人口2000人以上でも高校が無い島(加計呂麻島/与那国島、鹿児島県の長島など)は有る。通える範囲に高校が無い地域も日本にはたくさん有るので、人口わずか200人で高校が有る天売島は恵まれているように思える。高校が無いと子供は中学卒業後に島から出て本土の高校に通い、そのまま就職/進学して島には戻ってこない可能性が高い。

- 自分が天売島に滞在していた日は土日曜日だったので学校は閉まっていたので中を観ていないのだが、話を聴くとこの高校は生徒数よりも教師数の方が多いそうだ。科目ごとに教師は必要だから当然なのだが、小・中・高の先生とその家族で、島の人口の1割くらいを占めているのではないか?(単身赴任だけでなく、家族と赴任してくる人も居るのではないだろうか。未確認)。

公立(羽幌町立)なので学費も安い。この規模なら生徒一人づつの学力・性格に合った教育が出来る。どんな学力の生徒にも対応できるのではないだろうか。

高校のwebサイトで授業時間割を見た。4年制定時制コースから、国公立大学進学を目指すコースまで有る。選択科目には"応用英語"、"簿記"から"水産海洋"なんて科目も有り興味深い。部活動もバドミントン部と卓球部は全国大会出場レベルのようだ(繰返し書くが、生徒は全校で5人だけだ)。

島には2軒しかない店は無いのだが、食料品店で買い物をした際に、高校生が開発したと商品(燻製、缶詰とかだったか。購入するか写真を撮れば良かった)が売られている事に気付いた。 店のレジには、外国人観光客対応用に、中学校と高校の英語の先生の電話番号が張られていた。かなり実践的な授業をしていて、学校が島の生活に溶け込んでいるのが分かる。


奥の建物が校舎。




高校と違って、義務教育の小中学校はすごく立派...
小学校児童数は9人、中学校生徒数は7人。

「この季節は焼尻島で営業している店は無いから食べ物を予め買って持って行く方が良いよ。天売島よりも不便で物価も高いから。あ、でも"おくむら"さんならやっているかな。移住してきた人が開いた喫茶店」と、焼尻島に行く前に天売島で言われていたので、昼食はここに行こうと予め決めていた。

「"おくむら"さんは商工会に加盟してないから地図には載っていないし看板も出ていないのだけど、役場支所の近くに有る洒落た建物なので行けば分かると思う。道を歩いている人は居ないだろうから人には聞けないけど、島の人なら誰でも知っているよ」という情報でとりあえず向かったところ、すぐにそれと思しき建物を発見。中に入った。

意外な事に男性客が一人いて、店のオーナーと思われる女性とストーブの前の席に座り話している。「あら、お客さん?お食事?」と迎え入れられたのは10畳くらいの部屋。木製の家具、本棚を埋めている本は社会派小説と画集や建築関係の本。店と言うよりは女性の家の居間といった感じだ。

メニューは食べ物は"カレーライス"と"スパゲッティーニミートソース"の二つのみ。飲み物はコーヒーや チャイ(!)などが書かれている。カレーは売り切れたとのことでパスタを注文した。

「ゲストハウスのお客さん!?」と僕に声をかけた男性は島に住む漁師だった。港に帰ってくる漁船のエンジンの音が聞こえてきたところ「なんか貰いに行くか」と席を立って店を出て行った。

パスタは予想外のものだった。人口200人しかいない島にある喫茶店、そもそも経営は成り立たないはず。移住してきた人が趣味でやっている程度の店で「ミートスパゲティ」なのだから味は最初から期待していなかったのだ。見た目で「え?」と思い、口に入れてまた「あれ?」と思った。苦みが有る複雑な味。察した彼女が声をかけた。「美味しいでしょ、スパイスを配合してつくっているの」。



// オーナーは建築デザイナーとして東京で働いていた。横浜の関内に住み、都会での生活を楽しんでいたが、札幌の専門学校に講師として来てくれと誘われた。その札幌での生活がつまらく感じたと言う。「田舎に行きたくなったの、本当の自然の有るところ。コンビニが有るような中途半端なところはイヤじゃない?焼尻に来てここにしようとすぐ決めたの」。

「この家はどうしたのですか?」と尋ねると「Xさんに見つけてもらったの。いきなり都会から来た女に家を売ろうって人なんて居ないじゃない。やっと見つかったのがこの家。最初はボロボロの廃屋だったの。Xさんも(朽ち果てた)家を見せたら、あきらめて東京に帰るんじゃないかと思ってたのよ」(Xさんは島選出の町議で民宿を経営している/別述) 物件を見る前に、島に移住する事は決めて訪島したらしい。建築士の彼女はその廃屋を柱を残してすべて解体し、建て直した。新しい家を建てた方が安いのだが、原生林の前に立つこの家が気に入ったとの事。

島で唯一の喫茶店は目立つ。ガイドブック掲載や取材の話は何度も来るが断っていると言う。「あれ、でも港に置いてあったこの冊子には大きく載ってますよ」と冊子を鞄から出すとそれは観光協会に頼まれたので許可したと言う。

島での生活、島で暮らしている人達の話から話は派生していく。自分の意見をはっきり言う彼女の元に話をしに来る客が何人も居るようだ。 人口が急減していく離島にやって来た初めての移住者(教師や警察官などの転勤者を除いて)は、今のところ自分のペースを乱さず、気ままな一人暮らしを楽しんでいるようだった。

2時間ほど話していると、空が暗くなってきた。島での観光をまだ何もしていない。あ、これが島での観光だ。

(文章が長くなり過ぎたので、島での生活について聞いた話は別述)


看板も無いので知らないと入りにくい


すぐ前には森が広がる

原生林を突っ切る小径。小さな谷に架っている橋。
焼尻島は古代、海に沈んでいたそうで、天売島にはたくさん居るマムシが焼尻島には居ないなど独自の生態系。

焼尻島のヒツジ。サフォーク種(珍しい品種)。超高級羊肉として売られるそうな。
夏の間は放牧されているらしいが、この季節は建物の中で大切に育てられていた。

天売島はママチャリでまわる。一軒だけ有る貸自転車屋も長期休暇中だったが、近所の人が開けてくれた。
3連休の週末に天売島と焼尻島に行った。3日間で行ける辺境地で楽しそうな所という理由で、特に前知識無く出かけた。航空券も出発当日に取った。
両島ともゲストハウスが有る事は出発してから知り、スマホで予約した。

札幌からバスで留萌市で乗継、羽幌町からフェリー。行ってみて気付いたのは"シーズンオフ"という事だった(笑)。どちらの島もほぼすべての店が春まで長期休みになっている。

少しくらい観光客が来るのではとも思うのだが、ほぼゼロだと言う。現に天売島もあと2人組と1グループ(北海道大学野鳥研究会)が居ただけ。焼尻島に至っては自分ひとりだけだった。3連休でこれなのだから平日は推して知るべし。民宿も軒並み休業している。

だがその理由は"見どころが無い"のではなく、冬のこのエリアは風が強く船が欠航になりやすいから。10月から3月は船は1日1便しか無く、島に渡ってから帰りの船が欠航になると帰れなくなるのだ。去年の10月は1か月のうち14日も欠航したと言う。現に自分が行く前日の金曜日の便は欠航していた。
そんな事も知らずに来たのかと、島の人に驚かれる。「兄さん、何の仕事で島に来たね?(土木作業員か?)」「この季節に島外の人が一人で歩いていたら怪しまれますよ」とか。

ひやひやしながらも、自分が居た3日間はずっと雨は降らず、心配だった風も強くなく。どちらの島も周囲は12kmくらい(自転車で1周2~3時間ほど)で人口は約200人。小さいようで大自然。集落を抜けると人が全く居ないのが良い。本当に誰も居ない。

島に移住してきた人たちの話を聞き、滞在中は飽きることが無かった。島の暮らしだけでなく、人間関係いろいろ聞けて興味深い。みなの心配事はただ一つ、急速に進む過疎化。この話は次回投稿で。


穏やか(波1.5m)というが、往路は船酔いで気分が悪い。自分だけのようだが。

天売島からみた焼尻島。どちらの島もほぼ同じ大きさで、ほぼ同じ人口だが、それぞれ違う個性が有る。


春までは1日1往復のみの運行。連休との事で、島外に出た島出身者や、島外に買い物に出かけた島民などが乗っていて、割と混雑している。

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