Ethnic Aikawa(4) 山あいのベトナム寺院

カンボジアの祭りを後にして、本来の目的地へ

偶然出くわしたカンボジアの祭り。まさか愛川町の山あいで、これだけ大勢のカンボジア人が集まる祭りに遭遇するとは思わなかった。かなり寄り道をしてしまったが、そもそも僕たちがこの道を走っていたのは、別の場所へ行くためだった。この先にベトナムの仏教寺院があるという。カンボジア寺院を後にして、再び車を走らせる。周囲に広がるのは、中津川と山に囲まれた日本の田舎の風景。こんなところに本当にベトナム寺院があるのだろうか。

そう思いながら進んでいくと――。あった。
黄色を基調とした建物に、龍の装飾。周囲の日本の風景から、そこだけ突然切り取られたように雰囲気が違う。

日本の田舎に現れるChùa Việt Nam(ベトナム寺)

門をくぐって境内へ入ってみる。先ほどのカンボジア寺院は祭りの真っ最中で、大勢の人で賑わっていたが、こちらは対照的に静かだ。建物には龍などの装飾が施され、色使いも日本の寺とはかなり違う。
境内には白い観音像もある。異国の寺であることは違いないが、どこか日本の寺にも通じるものがある。ベトナムも日本も同じ大乗仏教の影響を強く受けた国。漢字文化圏という共通点もある。カンボジアやタイの寺院を訪れた時とは、また少し違った親近感を覚える。

外から見た以上に、ここが単なる「外国風の建物」ではなく、実際に信仰の場として使われていることが分かる。仏像が祀られ、供物が置かれている。ベトナム語の文字も見える。日本のお寺とは違うが、まったく違うわけでもない。仏像の前に果物や菓子などを供える様子などは、日本の仏壇にも似ている。仏教はインドから中国、ベトナム、日本へと伝わる過程で、それぞれの土地の文化と混ざり合ってきた。同じ仏教でも、国が変われば建物も仏像も祈り方も変わる。こうして実際に寺を訪ねてみると、その違いが面白い。

隣の建物から出てきたベトナム人女性が声をかけてきた。この寺には週末になると愛川町周辺だけでなく、東京や埼玉、時にはさらに遠方からもベトナム人が集まるという。皆でお経を読み、食事をして泊まっていくと言う。ベトナムの人たちにとって寺は「行く」場所というより、「帰る」場所なのだという話。外国で暮らしているからこそ、その意味は大きいのかもしれない。故郷の言葉で話し、故郷の宗教に触れ、食事をする。日本で生まれた子供たちなら、親や祖父母の国の文化を知る場所にもなる。ここは仏教寺院であると同時に、日本で暮らすベトナム人たちにとっての「もう一つの家」のような場所なのだろう。

なんと事前に連絡してくれれば一緒に食事(精進料理だそうだ)ができるので、また来てくれとの事。住職はベトナムから招聘しているベトナム人だが、ここに集うベトナム人は日本に住んでいて日本語ができるし、日本人でも歓迎と。これはなかなか珍しい体験かもしれない。

日本にある外国寺院の役割

今回の愛川町巡りでは、南米スーパー、ペルーのケーキショップ、カンボジア寺院、そしてベトナム寺院と回ってきた。外国人が日本で暮らすということを考えた時、最初に目につくのはレストランや食料品店だ。しかし、人の暮らしは「食」だけではない。宗教もある。人とのつながりもある。困った時に相談できる場所も必要になる。
実際、日本にあるベトナム寺院の中には、信仰だけでなく、生活に困った人への支援やコミュニティの拠点として役割を果たしている。外国人が増えるということは、外国料理店が増えることだけではない。その人たちの暮らしそのものが日本の中につくられていくということなのだ。

Ethnic Aikawa
神奈川県愛川町 (2025/10/19)

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