観音寺の昭和の街並み 青春デンデケデケデケ

伊吹島へ渡る船が出る港は、観音寺駅から徒歩20分ほど。

島には飲食店が無いだろうからと、古い商店街の中の小さなうどん屋( 柳川うどん)で少し早い昼食。奮発して天ぷらうどん。店内に芦原すなおのサイン色紙が有るのに気付いた。あぁ、そうか観音寺市は「青春デンデケデケデケ」の舞台だ。

そう思って街を歩くと、蒲鉾工場や魚屋、海の風景どれもが急に懐かしいものに思えてきた。伊吹島から帰り、駅への道を歩いていると、島で出会ったおばさんに車に乗るように声をかけられた。

今は国道のそば(線路を越えて山の方だ)に住んでいること、瀬戸内国際芸術祭の時期は島で喫茶店をやっていた事、そこに遠くからやって来た人の話などを車の中で聴く。来年の芸術祭の時には再訪すると伝えて車を降りた。
おばさんは昭和25年の生まれと言っていたので、自分の母親、そして青春デンデケ世代よりも数年若い。あぁ、この人たちが高校時代の時の話なんだ、と思いながら観音寺駅から列車に乗った。
車窓は穏やかな瀬戸内海の夕暮れ。上京していく主人公、そしてそれに照らし合わしてこの本を読んだであろう(&映画を観ただろう)この街から東京に来ている人の事を考えた。

金蔵寺の宿に帰り、夜でもやっている近くのうどん屋で夕食をとった。そしてうどん屋の前の古本屋で、この文庫本を見つけた。80円。以前この本を読んだのは高校の時。内容はうろ覚えだったが、今読んでもやはり面白い。 ザ・ベンチャーズのテケテケサウンドと”高校三年生”などの歌謡曲、英語と讃岐弁が交じり合う、どこかほっこげな(馬鹿馬鹿しい)懐かしい光景。舞台はこの日歩いた観音寺市街と、前日に訪れた祖谷渓。ラストは観音寺駅からの予讃線。これほど偶然が重なると面白い。
東京に帰り、youtubeで関連動画を観る。著者はバンドに憧れていたが、当時は同級生がギターを弾くのを見ていただけだったらしいが、直木賞受賞を機に本当にバンド”ROCKING HORSEMEN”を結成したとのこと。そうだ、これは昔を懐かしむ話ではないのだ。青春(←なんて恥ずかしい言葉!)はいつまでも続くという事を描いた話だったのだ。自分が観音寺を訪れた日(6/21)に、たまたま年に数回しか行われない彼らのライブが行われていた事を知った。もう60代のはずだが青春が続いている、彼らの姿を見れず残念だ。