【寿荘】山奥の一軒家の温泉と川床

今回泊まるのは「寿荘」。宿のWEBサイトはなく、予約サイトにも掲載されていない。山深い川沿いの一軒家で、女性が一人で切り盛りしている温泉宿。

予約の電話をすると、いきなり少し変わったことを聞かれた。
「本当に何もないですが大丈夫ですか? 普通に考える宿の設備やサービスはないですが、本当に大丈夫ですか?」そこまで念を押されると、逆にどんな宿なのか気になってくる。連休最後の夜なら空いているというので、5人で泊まることにした。最大12人まで泊まれるが、営業は一日一組のみ。つまり、この日は自分たちだけで一軒の宿を使うことになる。

携帯電話も繋がらない山の中へ

ナビを頼りに、四万十川の支流に沿った道を車でどんどん山へ入っていく。着いたのは携帯電話の電波も届かない深い渓谷の中。川沿いに一軒だけ建つ寿荘は、お世辞にも立派な旅館とはいえない。

この日の5人は男性3人、女性2人。男性には大きな部屋、女性には小さな部屋が用意されたのだが、男性の部屋は30畳、女性は4畳半だった。これでは宴会会場と控室だ(笑)。

真夏でも山の中は涼しく、エアコンはいらない。窓の外からはヒグラシの声が聞こえてくる。本来なら川のせせらぎを聞きながら過ごすところだが、前夜は大雨。この日は「せせらぎ」というより、かなり大きな水音が響いていた。

予約が入ってから、山へ採りに行く

夕食は川床で食べることもできる。ただ、この日は前日の大雨で川が濁流のようになっていたので、室内で食べることにした。

食卓に並んだのは、この周辺の山と川で採れたものばかりだった。鮎は宿の目の前の川で獲れた天然物。そして山菜は、宿泊の予約が入ってから女将さんが山へ入り、この日のために採ってきたという。

さらに出てきたのが川海老の天ぷらだった。宿の前の川で獲れるもので、小さめの車海老ほどの大きさがある。川海老という言葉から想像していたものより、ずっと立派だった。ただし、いつでも食べられるわけではない。雨で川が増水すれば獲れないため、その日は出すことができない。

この宿の夕食は「いつ来ても同じ名物料理が出てくる」というものではない。その日の山と川の状態で、食卓に並ぶものも変わる。天然鮎を食べ、採れたばかりの山菜を食べ、川海老の天ぷらをつまむ。日本酒がすすむ。

獲れたばかりの鮎。
予約が入ってから山に入り採って来たという山菜

宿の前の川で獲れた川海老。小さめの車エビくらいの大きさ。雨の後に川が増水すると獲れないので提供できない場合も有るらしいが、この宿の名物。日本酒がすすむ。

東京日本橋から、四万十の山奥へ

宿帳に書いた自分の住所(東京都中央区日本橋堀留町)を見て、女将さんが意外な話をした。以前は東京日本橋兜町にある野村證券の本社で働いていたと言う。
東京・日本橋の証券会社本社と、四万十の山奥。一人の経歴の中に、全く雰囲気の異なる二つの場所がある。

宿にはWEBサイトもなく、予約サイトにも載せていない。積極的な宣伝もしていない。それでも、寿荘に泊まることを目的に、わざわざ欧米から訪れる客もいるという。
立派な客室や充実した設備があるわけではない。携帯電話もつながらない。確かに、一般的な旅館に求めるようなものは少ない。その代わり、ここでしか出せないものは、すぐ目の前の山と川にある。

寿荘

1泊2食7350円。電話予約のみ。
12人まで可能だが一日一組のみの貸切営業。
四万十市西土佐用井1024
0880-52-1049
宿泊時(2020年7月)時点での情報です。


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