「サボールラティーノ アイカワ」


バンコクに住む荒井くんが一時帰国し、今週は厚木にいるという。日曜日に会うことになり、「どこへ行くかはすべて任せる」とのこと。それなら普通の観光地へ行っても面白くない。座間駅近くでレンタカーを借り、向かったのは神奈川県愛川町。今回のテーマは、「エスニックタウン愛川町」を巡ること。……と言っても、愛川町が一般に「エスニックタウン」と呼ばれているわけではない。ただ、この町を車で走っていると、南米や東南アジアの店がぽつぽつ現れ、日本の普通の郊外とは少し違う風景が見えてくる。

実際、愛川町は外国人住民の多い町だ。その背景にあるのが、町の東部に広がる神奈川県内陸工業団地。1990年代以降、工場などで働くブラジルやペルー出身の日系人とその家族が増え、町の中に南米系のコミュニティがつくられていった。現在では南米だけでなく、ベトナム、フィリピン、カンボジアなど、さまざまな国にルーツを持つ人々が暮らしている。

そんな愛川町を巡ってみる。

最初の目的地「Sabor Latino」

座間駅から愛川町中心部までは15kmほど。

距離だけ見れば近いのだが、交通量の割に道が細く、結局40分くらいかかった。最初に立ち寄ったのは、県道沿いにある「Sabor Latino(サボール・ラティーノ)愛川」。「Sabor Latino」はスペイン語なら「ラテンの味」といった意味だ。外から見ると、日本の一般的なスーパーとはかなり雰囲気が違う。

中へ入ると、さらに印象が変わる。

聞こえてくる会話はポルトガル語やスペイン語。商品棚に並んでいるものも、日本のスーパーではほとんど見かけないものばかりだ。ブラジルとペルーの商品が中心で、そのほかの中南米の商品も混じっている。併設された軽食コーナーにはブラジル料理やペルー料理だけでなく、アルゼンチンのチョリパンまである。「外国食材を扱う日本のスーパー」というより、南米の人たちが普段使いする店が、そのまま愛川町にあるという感じだ。

肉売り場はやっぱり南米

肉は豚肉と牛肉がほとんど。肉売り場を見てみる。中心は牛肉と豚肉。日本のスーパーとは切り方やパッケージが違い、見ているだけでも面白い。特に豚肉の加工品が充実している。外国のスーパーへ行くと、その国の食文化が一番分かりやすく表れるのが肉売り場なのかもしれない。

何を日常的に食べ、どんな料理を家庭で作っているのか。

観光客向けのレストランより、こういう売り場の方が生活そのものが見えてくる。

豚肉の加工品は充実している。

日本から南米へ行って、また日本へ?

棚を見ていて、不思議な商品を発見した。日本のカレー粉……?ところがパッケージを見ると、どうも南米市場向けの商品らしい。

日本で南米向けに作られ、南米で販売され、それが今度は日本に暮らす南米出身者向けに戻ってきたのだろうか。もしそうなら、なかなか面白い「逆輸入」である。しかも唐辛子マークが5個。日本のカレーとは、かなり違う味なのかもしれない。

輸入ビールが安く感じられる

飲料コーナーには、おなじみのガラナやペルーのインカコーラ。そこまでは分かる。しかし、ペルーのファンタまでわざわざ輸入されている。「ファンタなら日本にもあるのに」と日本人は思うけれど、長く外国で暮らしていると、こういう微妙な違いこそ故郷の味なのかもしれない。

輸入ビールも思ったより安い。一方で、なぜか少しだけタイの商品も置かれていた。

南米専門店というより、この地域に暮らす外国人の需要に合わせて商品が増えていった店なのだろう。

南米のパンと軽食を食べる

南米では定番らしいシンプルなパン。

見た目は小型のフランスパンに近い。1個115円。

まだ愛川町巡りは始まったばかりなので、ここで食材を大量に買うわけにはいかない。

そこで、併設された軽食コーナーで食べてみることにした。注文したのは、「チュラスキト」牛肉を挟んだボリュームのあるサンドイッチ。

そして、「パステル」肉やチーズなどを薄い生地で包んで揚げた、ブラジルではおなじみの軽食。
3人でシェアする。チュラスキトは、パンに牛肉などの具材をたっぷり挟み、注文してからトーストしてくれる。パステルもチーズと肉がしっかり入っている。日本人の感覚なら、どちらも1個食べれば小腹を満たすには十分な大きさだ。

この店は10年くらい前から?
このあたりにペルー人、ブラジル人が増えたのは1990年代中頃からとの事。

パン(チュラキスト)は中に具材が入っていてトーストされている。パイ(パステル)もチーズと豚肉が入っている。日本人なら1個で小腹を満たすには十分だろう。

値段だけを見るとファストフードとしては少し高く感じたが、出来合いのものを温めるわけではない。注文を受けてから一つ一つ作るので、10分ほど待つ。その代わり、出来たてはやはりおいしい。

スーパーだけではない、南米系コミュニティの存在

店の隣には、カトリック教会の看板が掲げられた部屋もあった。訪れた時には閉まっていたし、外観だけなら教会とは気づかないような場所だった。しかし、食料品店の隣に宗教施設があるというのも興味深い。外国で暮らす人々にとって必要なのは、故郷の食べ物だけではない。言葉、宗教、人とのつながり、そして母国との連絡や送金。

店内にはWestern Unionの国際送金ブースもあった。スーパー、食堂、教会、国際送金。それぞれ別々のものに見えるが、外国で暮らす人の生活という視点から見ると、すべてつながっている。

「珍しい外国食品を売っている店」として訪れたSabor Latinoだったが、実際に歩いてみると、ここは愛川町で暮らす南米出身者の日常生活を支える場所の一つなのだと感じた。

群馬県大泉町や静岡県浜松市ほど「ブラジル人の町」として全国的に知られているわけではない愛川町。

しかし、観光地ではない普通の神奈川県の町を歩いて、こうした異文化の日常に出会えるところが面白い。

そしてSabor Latinoは、まだこの日の「Ethnic Aikawa」巡りの最初の一軒。

愛川町をもう少し走ってみることにする。

Ethnic Aikawa
神奈川県愛川町 (2025/10/19)

この記事は,ブログのカテゴリ
[Tokyo Ethnic Table]の投稿です。


この記事はブログ内のカテゴリ
[東京の中の異国]の投稿です。


\ 最新情報をチェック /

シェアする