お盆休み。帰省も旅行もせず東京に残っていた友人たちと、どこかで夕食を食べようということになった。選んだのは東十条にその週オープンしたばかりのクルド料理店「メソポタミア」。日本に暮らすクルド人がどれくらいいるのか、この時の自分はよく知らなかったが、クルド料理を専門にする店はかなり珍しい。せっかくなら行ってみようと、6人で店を訪れた。

ところが店に入ると、すでに15人ほどの団体が食事をしていた。見たところクルド人らしいのだが、何人かはスーツ姿で、普通の食事会とは少し雰囲気が違う。

気になって声をかけてみると、「クルディスタン政府の一行だ」という。
「クルディスタン政府?」日本はクルディスタンを独立国家として承認しているわけではないので、大使館があるはずもない。それでは、このスーツ姿の人たちは何者なのだろう。尋ねてみると、「Minister」という言葉が返ってきた。大臣??

話を聞いていくと、一行は広島と長崎の原爆関連行事に出席した後、東京に来ており、明後日の便で帰国するという。教育関係の政府要人をはじめ、スレイマニヤ、デュカーン、アルビルなど各地の市長、日本クルド友好協会の関係者、在日イラク大使館の関係者らも一緒だった。そんな人たちが、たまたま自分たちが夕食を食べに来た東十条の店で、隣に座っている。

クルディスタンに行った日本人が、なぜかここにいる

さらに面白かったのは、この日参加していた友人のうち二人が、実際にクルディスタン地域を旅行したことがあったことだ。イトウタクミくんは相手が誰なのか分かると、一気に興奮した

「え!あなたはスレイマニヤ市長!! なんでこんな所に!! 僕行きましたよ!これその時の写真!! え!あなたはデュカーン市長!! 僕デュカンレイク行きましたよ!! ほらその時の写真!!」と大興奮。

クルディスタンに旅行しても絶対に会えない人たち(アルビル市長も居た)を前にして盛り上がる。向こうもクルディスタンに来た事が有る日本人がこんなに居るのかと笑っている。 「次回クルディスタンに来る時は前もって言いなさい」と言いながら「彼らが来たときは便宜を図るように」とどこかに電話をしている。面白すぎ。 facebook繋がっても何に使えばよいのだ?ISとの戦いが勝利に終わり景気が良いのだろうか。

スレイマニヤ市長、デュカーン市長、他。
今話題の クルディスターン。
すご過ぎる。

「君たちは何の組織なんだ?」

今度は逆に、自分たち6人について質問された。「これはどういうグループなのか?」
「旅好きの友人たちです」
「メンバーは何人いる?」→いや、そもそも組織ではない。
「何の仕事でクルディスタンへ行ったのか?」→仕事ではなく旅行です。
「何のNGOなのか?」→だからNGOでもない。
どうやら、ただ旅行が好きで集まっているだけ、という説明がなかなか理解してもらえない。
「旅行に行く時、政府からいくら支援を受けているのか?」→そんなものはない。

さらに自分を見て、「君がリーダーなのか。インド人の顔のようだが」
話がどんどん妙な方向へ進んでいく。

クルディスタンの旗。
日本にもこんなに クルディスタンファンは居るんです!

東十条で出会ったクルディスタン

クルディスタンはこれまで、IS(いわゆる「イスラム国」)との戦闘が続いており、日本から見れば「危険な地域」というイメージが強い。一方で、自分たちの目の前にいるのは、市長や政府関係者でありながら、旅行の写真を一緒に見て笑い、「また来なさい」と話している普通の人たちだった。

「クルディスタンへ歯のホワイトニングをしに来なさい。自分がやってあげる」そんな誘いまで受けた。
アルビルが発展しているという話を聞きながら、「いや、そもそも歯のホワイトニングをするためにクルディスタンへ行くというのは何なのだ」と思う。

結局、クルド料理を食べに来ただけのはずが、いつの間にかクルディスタンの政府関係者や市長たちと話し込み、連絡先まで交換する夕食会になった。

普通のおじさんにしか見えないけど、左は クルディスタン政府の教育大臣、右は 今をときめくアルビール市長!!( アルビールは高層ビルの建設ラッシュ、第2のドバイと言われている)

VIPを前に訳が分からず笑うしかない。
ISとの戦闘はどうなった?

しかも話はこれで終わらなかった。翌日は、この店で知り合った「クルディスタンの歯科医師兼教師兼大臣の甥」を東京で案内することになった。イラクのテレビ取材まで入るかもしれないという。昨日までは、もちろんそんな予定はなかった。旅に出なくても、東京にいるだけで、ときどき旅以上に訳の分からない出来事が向こうからやって来る。そんなお盆の一夜だった。

追記:この投稿が英語訳されて読まれていた。インド人に似ていると言われた事とか...


クルド料理「メソポタミア」


この記事は、ブログ内のカテゴリ
[ Tokyo Ethnic Table ]の投稿です。



この記事はブログ内のカテゴリ
[東京の中の異国を訪ねる]の投稿です。


\ 最新情報をチェック /

シェアする