「中国会」のマッチ箱

引越の片付けの際に出てきたマッチ箱。

今から7年前。あるプロジェクトが失敗に終わり、自分は香港に居た。一緒に来てくれていた弁護士のMさんの知人Kさんもちょうど今香港に居り、「残念会をしましょう」と声をかけられ夕食を一緒にとることになった。

地下鉄で香港島にわたり中環駅で地上に出た。指定された場所は旧・中国銀行の最上階。専用エレベーターに乗り、ドアを開けると物腰の穏やかなスタッフに出迎えられ個室に案内された。

レトロな感じでまとめられた落ち着いた雰囲気。入店時も何もチェックは受けなかったのだが、一見では入れない場所であることは言われなくとも分かる、やんごと無き空間。ビル外壁に有る小さな穴は、日本軍の撃った銃弾で開いた穴ですよ」とか。

個室は10畳ほど。アンティーク中国家具が置かれた静かな雰囲気。Mさんの知人であるKさんは落ち着いた感じの方だった。香港やマカオでの生活の話など会話は面白く、博識な方である事は分かる。仕事の内容については話をされず「中国ビジネスに携わって来た。広東に居た」としかその場では伺わなかったのだが、帰国後に調べると、東京銀行の役員を経て、某外国投資銀行の東京支店副支店長として中国向けのプロジェクトファイナンス業務に携わってこられた事を知る。自分などが会ってもらえた幸運に驚く。

Kさんが女性スタッフに食事をオーダーする。優雅な立ち振る舞いのスタッフ達。料理はあっさりとした味付けだったように思う。もう何年も前のことでメニューの詳細は覚えていない。冬瓜のスープが美味しかったという記憶がある。

食後にライブラリーを覗き、屋上に連れて行かれた。外に出た途端に間近に迫る摩天楼の夜景に圧倒される。中国銀行タワーなど100階建て以上のビルが建て並ぶ合間に有る小さなビル(中国銀行ビルは15階建程度)の屋上。周囲のビルの眩い光と、間近の海上に上がる花火、素晴らしい夜景。

これまでの人生で最も記憶に残るラグジュアリーなひと時。厚かましくも自分を含め6人分すべて奢っていただき価格も分からない。ネットで調べると会員権は15万香港ドル、会員数は決められており、誰かが辞めなければ新しく入ることは出来ないらしい。それも普通は13階のダイニングに通されると有る。15階の個室に入れたのはラッキーだ。

このマッチ箱自体は、全く豪華さの無い、普通の人にとってはただの紙切れ。現実生活に戻った今。このレトロな絵柄のマッチ箱を見て、頑張らなくてはと思う。


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