【民宿 十三夜】旅先で見つけた集落へ移住して始めた古民家宿/八峰町

偶々、同じ日に知人の金谷さんも羽田から大館能代空港へ向かう便に乗る予定だと分かり、それなら一緒にどこかに泊まろうということになった。選んだの、秋田県八峰町の小さな集落にある「民宿 十三夜」だった。

能代駅から車で15分ほどなので、交通が途絶したような山奥ではない。それでも宿の周囲まで来ると家は少なく、人口減少の進んだ、いわゆる限界集落になる。

十三夜は大きな古民家を使った民宿で、普段から予約を受けるのは一日2組まで。この夜の宿泊客は自分たち二人だけで、大きな家を貸切で使うことになった。

旅で訪れた秋田に移住して宿を始める

宿を営んでいるのは、もともと福島県に住んでいた女性だった。旅でこの辺りを訪れたときに環境を気に入り、この古民家を購入。一人で秋田へ移住して宿を始めたという。有名な温泉地や観光地へ移住して宿を始めたという話ではない。能代からそれほど遠くはないとはいえ、選んだのは人口の少ない小さな集落だった。

旅行をしていると「ここに住んだらどんな暮らしになるのだろう」と思う場所に出会うことがある。しかし実際に家を買い、それまで暮らしていた土地を離れ、そこで宿を始める人は多くない。十三夜では古民家そのものを見るだけでなく、なぜこの場所を選び、ここで宿を始めたのかという宿主の話も、この宿に泊まった記憶の一部になった。

1泊2食で280円(6600円から全国割20%引、八峰町独自割5000円引)。暖房費300円。

二人のために用意された夕食

夕食には煮たカレイ、ボタン海老の刺身、小鉢などが並んだ。宿泊客は自分たち二人だけ。それでもこれだけの料理を用意してくれている。魚は宿主自身が市場まで買いに行くのではなく、近くの魚屋に仕入れを任せているという。

小鉢の一つには「切り込み」があった。切り込みは、ニシンなどの生魚を刻み、塩と米麹、唐辛子などと一緒に漬け込んで発酵・熟成させたもの。北東北から北海道の日本海沿岸で食べられてきた郷土料理。

煮魚や刺身と一緒に、こうした土地の食べ物が特別な説明もなく小鉢の一品として出てくる。能代の地酒を飲みながら、時間をかけて夕食を食べた。

薪ストーブの前で聞く、移住の話

外は冬の秋田。部屋では薪ストーブが明々と燃えていた。地元の魚や料理を食べ、能代の酒を飲みながら、宿主が福島からこの土地へ移住してきた話を聞く。

大きな旅館なら、食事が終われば部屋へ戻り、それで一日が終わることも多い。しかし十三夜では、薪ストーブの前で宿主と話していた時間まで含めて、その晩の宿泊だった。旅で偶然訪れた土地を気に入り、古民家を買って一人で移住し、そこで今度は旅人を迎える。
その話を聞いているうちに夜は更け、部屋へ戻ると落ちるように眠った。

朝食

翌朝には朝食が用意されていた。

十三夜で覚えているのは、古民家の建物だけではない。冬の小さな集落、大きな家に自分たち二人だけという静けさ、薪ストーブ、土地の魚と地酒、そしてこの場所を旅で見つけて移り住んだ宿主との夜の話。古民家に泊まることだけでなく、その古民家での暮らしを見て、宿を営んでいる人に会うこと。それが十三夜に泊まる一番の理由なのだ。

民宿 十三夜

秋田県山本郡八峰町峰浜小手萩萩ノ城23
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記事の内容・情報は、宿泊(2023年1月)時点のものです。

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