ベルホヤンスクの学校

ベルホヤンスクには小・中学校が有る。高校は隣の町(と言っても60km離れている)バタガイ(Батагай)に有り、ベルホヤンスクからでは通えないので寮に入るらしい。滞在3日目はその学校を訪問した。ベルホヤンスクの人口(1200人)の割には学校の児童・生徒数は多い。

こんなところにこんな立派な建物がと驚くと、この学校の運営はUNESCOの資金で行われているとのこと。この僻地にこれだけの建物を建てるには莫大な資金が必要なはず(ベルホヤンスクはバタガイから60kmというだけではない。バタガイはヤクーツクから数百km離れていてそこには道は無いので、外部からの物資はすべて空輸しなければいけない)。建物だけでなく教材やAV設備などもすべて整っている。教師の給料も非常に高い(これは別述する)。
首都ヤクーツクではサハ人(ヤクート人)の割合は半分以下になるが、この町はほぼ全員がサハ人。だが、わずかだがロシア人や混血っぽい子供もいた。
授業は サハ語(ヤクート語)で行われている。中央集権体制のロシア連邦でこれは驚くべき事だと思う。小学3年生の算数の授業を見学したが、ロシア語とサハ語の教科書を併用していた。ヤクート人口は世界で40万人程と言われる。これだけの人口規模で教科書をつくれる事は、彼らの経済力、民族意識が高いことを意味する。ロシアの連邦内国家・少数民族の中では最も恵まれているのではないだろうか(中央アジアの独立弾圧の動きと比較するまでもなく)。 サハ共和国では石油・金・ダイヤモンドが取れるから、ロシア連邦としてはムチではなくアメを与える方針なのだろう。
ユネスコの援助で運営されているからだろう、民族文化を残すために、国語や算数の授業に並んで、民族楽器ホムス(口琴)の授業が有った。授業の名前は「音楽」ではなく「ホムス」だ。毎週1時間も教える内容が有るのか不思議だが、専門の先生が授業を行っていた。
体育の授業もみた。サッカーやバスケなどチームスポーツではなく、レスリングや体操など個人競技が中心のように感じた。体育館でハードルを使った跳躍走、バランス感覚を鍛える前屈、モンゴル相撲のようなレスリング、腕を引っ張り合う座って行う相撲などを見学、子供たちと一緒に過ごした。
教師は笑顔が似合う爽やか男子…だが、軍事大学を出ていると言う。ロシアの軍事大学…人の殺し方とか絶対習ってるよなと話す。
一日中、あちこちで子供達から一緒に写真を撮ってとねだられる。多くの子供がスマホを持っている(この町には電波が入らない、wifiもほとんどないはずだが)。色々と興味深い。
食事は冷凍魚のスライス、鹿肉を茹でたもの、新鮮なアイス、夏の間に獲ったベリーなど。さすがに毎食同じものを大量に出されるので食べきれない...






歓迎の式典なども有り、非常に恐縮する。
大きな体育館で自分たち日本人5人の為に、全校生徒が順番にダンスや歌などを披露する。あまりにも不思議な光景で、自分たちは何をやっているんだと不安になる。北朝鮮の金正恩になった気分だ。自分に似つかわしくない、慣れない事をやるのは何だか苦手だ。面白かったけど。
この子供たちが大きくなった時、自分たちの事を覚えているかな。小学校に不思議な外国人たちがやって来たことを。
(以下はネットで調べた内容)
サハ共和国には国費奨学生の制度が有るらしい。国外の大学などで専門教育を受ける場合は国が資金を提供する。卒業後に帰国して国内で働けばその資金は返済不要というもの。国が豊かでかつ人口が少ないからこそ出来ることだが、そうしないと民族規模を維持できず、言葉や文化などが消える恐れがあるのだろう。繰り返すがサハは少数民族の中ではかなり恵まれていて、民族消滅の可能性は少ないが。



