[天野館]奥出雲の老舗旅館/木次
今回の旅の目的はJR木次線に乗る事だが、宍道駅18:54発の列車にしか間に合わない。出雲横田駅(22:03着)では遅すぎるので、この日は木次(19:46着)に泊まることにした。
木次駅近くの旅館に、その日の昼前に電話をした。電話をとったのはお爺さんのようだった。「部屋は空いているので大丈夫だと思うけど、息子に確認してみる」との由。しばらくして電話がかかってきた。
夕食は間にあわないので駅前のスーパーで買うように、スーパーは20時までなので駅に着いたらすぐ行くように、そのスーパー以外に店は無いと伝えられる。自分が木次の街に泊まる趣旨をよく分かっておられる。
木次駅から宿までは徒歩8分ほど。線路と平行に古くからの街道筋のような街並みが続いている。夜8時で行き交う人も車も居ない。「焼さば」の暖簾を出した魚屋が店仕舞いをしている。翌日に地元の人から聞いた話では、古くから木次は物資の集散地として栄えた街で、奥出雲の山々に住む人は木次まで下りて買い物をしていた。朝に日本海の魚で獲れた魚は木次まで運ばれて、ここで焼かれた焼さばが名物だったとのこと。京都の人が若狭の鯖を食べるのと同じ理由だ。面白い。
土曜日の夜8時
宿では若い主人が出迎えてくれた。30歳くらい、藍色の割烹着で感じが良い。部屋は2階の奥にある。ネットの口コミどおり部屋に鍵は無いのだが、隣の部屋との間には仕切り部屋が有り全く気にならない。この日はもう一人泊まっているようだが、見かけることは無かった。
朝食は若い女将が部屋まで運んできてくれた。宿泊者も少ないし、老舗と言っても商人宿でもあるので特に期待していなかったが、すべての料理が美味しい。素材も地元のもののようだ。味噌汁のシジミが肉厚で美味しい (いちいち説明は無いが当然宍道湖のシジミだ)。
宿を出てからもお二人がずっと見送ってくれていた。駅へは川沿いの桜並木(先週散ってしまったようだ)を歩く方が気持ちが良い、川には沈み橋が有り目を瞑って渡れば願いが叶うとの事。
そう言えば、夜にチェックインをして部屋に入った後に、ご主人が”忘れていた”と言った感じで、木次線の写真集を部屋に持って来た。「お好きかなと思いまして」と。
初めて訪れる町のイメージはこんなことで決まる。
天野館
島根県雲南市木次町木次51番地
TEL:0854-42-0006