アラブ料理「アヤキッチン」日本に溶け込むエジプト/茨城県坂東市

予定になかった、坂東市のアラブ料理店へ

東京を朝に出発して約3時間。この日は5人で、茨城から千葉方面の外国料理店や外国人コミュニティを巡る予定にしている。ところが、まだ最初の目的地にも着かないうちに、「お腹が空いた」という声が出始めた。この後も何軒か食べ歩く予定なのだが、空腹のままでは仕方がない。そこで予定を変更して立ち寄ったのが、茨城県坂東市にある「アヤキッチン(AYA KITCHEN)」。

実はここへ来るのは初めてではない。以前訪れた時の印象が良かったので、「それならここへ行こう」と再訪することにした。坂東市の中心部から少し離れた、ごく普通の住宅地。そこにアラブ料理の店がある。建物もおそらく以前別の店だったところを利用したのだろう。派手なアラビア風の外観でもなければ、観光客向けの「異国情緒」を演出しているわけでもない。知らなければ、そのまま通り過ぎてしまいそうだ。しかし中へ入れば、そこはアラブ料理店。こんな店が日本の地方の普通の町にぽつんとあるのが面白い。

「Hello!」から始まる、やたら明るい接客

そしてこの店で料理以上に印象に残っているのが、エジプト人の店員。前回来た時と変わらず、とにかく明るい

愛想がいいというレベルを超えて、店全体の空気を一人で明るくしてしまうような人だ。話を聞くと、エジプト出身だが、アメリカのペンシルベニアに10年間住んでいたという。なるほど。英語の話し方も身振りも、僕が勝手に想像している「エジプト人」というより、どこかアメリカ人っぽい。

僕だけがそう感じたわけではなかったらしく、食事を終えて店を出てからも、「あの店員さん、良かったね」と皆で接客を絶賛することになった。外国料理店では、料理そのものだけでなく、そこで働く人とのちょっとした会話が記憶に残ることがある。この店はまさにそういう店だ。

とりあえずフムス。でも、食べ過ぎる

料理を注文して待っている間、まず出てきたのがフムスとナン。フムスは、ひよこ豆をペースト状にし、ゴマのペーストであるタヒニやオリーブオイルなどを合わせた、中東ではおなじみの料理。パンにつけて食べる。これがうまい。まだこれから肉料理が次々に出てくるというのに、5人でつまんでいるうちに、あっという間になくなってしまった。これから今日は何軒も行く予定なのに。最初の店の前菜で満腹になってどうする。

大きな串焼き肉

続いて出てきたのが、豪快な肉の串焼き。一本一本がかなり大きい。表面にはしっかり焼き目がついているが、中はジューシー。スパイスは使われているものの、必要以上に辛いわけではない。5人でシェアして食べるにはちょうどいい。中東料理というと、「香辛料が強そう」「クセがありそう」と思う人もいるかもしれない。しかし、この店の料理はそういう意味での食べにくさがほとんどない。だからといって、日本人向けに味を変えているようにも感じない。ちゃんとアラブの料理なのに、普通においしい。

米の上に肉。「マンディ」

そしてマンディ。大皿いっぱいの香りのついた米にその上に大きな肉がドンと載っている。マンディはアラビア半島南部、特にイエメンなどで食べられてきた米料理で、肉と米をスパイスとともに調理する。見た目はかなり豪快。肉料理の上に、また肉料理である。添えられたソースもあるが、それほど辛くない。米に肉の旨味が加わり、皆で一気に食べる。「みんなむさぼり食す」という表現が一番近い。今日は食べ歩きなのだからセーブしなければならないのに、そういうことを忘れそうになる。

肉だらけなのに、意外に重くない

この日の料理を並べてみると、かなり肉が多い。ところが不思議と、それほど重く感じない。脂っこい肉料理を大量に食べた時のような「もう何も食べられない」という感じにならない。スパイスやハーブ、米、フムスなどと一緒に食べるからなのだろうか。味付けも、日本人に合わせて無理にアレンジしているようには感じない。それでも、日本人の舌にはかなり合うと思う。中東料理をあまり食べたことがない人を連れてきても、ここなら楽しめそうだ。

英語しか話さない店員と、日本語しか話さない客

食事をしている途中、地元のお客さんがテイクアウトを取りに来た。そして、さらに面白かったのが町内会の集金。普通に近所の人が店へやって来る。ここまでは、日本の町でよくある日常風景。ところが店員が話すのは、ほぼ英語。訪ねてきた人が話すのは日本語。
……なのに、なぜか話が進んでいる。少なくとも、傍から見ている限りではちゃんと成立しているように見える。どうやって意思疎通しているのかよく分からない。でも、これで日常生活が成り立っているのだから、それでいいのだろう。この光景が妙に印象に残った。

「外国人の店」ではなく、町の一軒の店

外国料理店を巡っていると、店によって日本社会との距離感がずいぶん違うことに気づく。日本人客を主な対象にした外国料理店もあれば、その国の人たちだけが集まる店もある。アヤキッチンは、そのどちらとも少し違う。エジプト人がアラブ料理を作り、英語で接客している。それだけを聞けば、かなり「外国」の店に思える。ところが実際には、近所の人がテイクアウトに来て、町内会の集金までやって来る。つまり、この店はすでに坂東市の日常の中に組み込まれている。外国人が日本に暮らすというのは、何も特別なことばかりではない。
店を開けば近所の人が来る。町内会とも付き合う。言葉が完全に通じなくても、何とかやっていく。その積み重ねで、いつの間にか「外国人がやっている珍しい店」ではなく、町にある普通の一軒の店になっていく。その感じがとても面白かった。

5人で4,690円。そしてエジプシャンティー

最後にはエジプシャンティーをサービスしてくれた。肉をたっぷり食べた後に飲む、甘いお茶。会計は5人で4,690円。一人1,000円にもならない。かなり食べた気がするのだが、この値段だった。

「家の近所にあったら通いたい」というのが、食べ終えた時の感想。料理がおいしいというだけなら、ほかにも店はある。でも、あの明るい店員にまた会いに来たくなる。そう思わせる店は、それほど多くない。
さて。ここは今日の目的地ではなく、空腹のため急遽立ち寄った店にすぎない。しかも、この時点ですでに東京を出て3時間。今日の「異国巡り」は、まだ始まったばかりだ。

アヤ・キッチン

茨城県坂東市辺田1469-11
アヤキッチン(公式)


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[Tokyo Ethnic Table]の投稿です。


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