[吾妻屋旅館]夫婦が営む温泉旅館/美都

萩・石見空港に夕方に着く。夕食までにたどり着ける、車で一時間くらいで行ける温泉を探した。美都温泉は公共の宿と旅館が一軒づつ有る山間の温泉。アルカリ性の、肌がすべすべになるお湯。
その一軒だけある旅館「吾妻屋旅館」はやや高齢の夫婦が営む2食付11000円の温泉宿。楽天などのOTAや旅行会社と提携しておらず、予約は電話のみ、支払は現金のみ。ネットでの口コミは少ないのだが、料理がおいしく接客が良いとの事なので安心して向かった。

ご主人が玄関で出迎え「こんな山奥にまで…」と物腰低い対応。荷物を解き、すぐ夕食にしてもらい、階下の座敷に向かう。女将さんが料理を何回かに分けて出してくれる際に話をした。

「お客様の住所を見たら、すごく懐かしくて… あ、主人も言っておりましたか。私たちも昔は東京に居たんですよ。主人の実家はここ(美都町)で明治から旅館をやってましてね。私と結婚した後に、主人が旅館の跡を継ぐことになってここにやってきたんです。

お客さん日本橋、あ、小伝馬町ですか。私、馬喰町の花王で働いてたんですよ。え、今は馬喰町とは違うんですか?馬喰町のエトワール海渡って分かります? その横に花王の本社が有ったんですよ。越谷に家を買って、マンションは嫌でね。そう、日比谷線で乗換なしで行けて。え、私の生まれは長崎ですよ(笑) 主人も私も東京に出てきて知り合ったんです。

ちょうど竹下さんのふるさと創生事業の一億円の時でしてね。ここ美都町ではその1億円で温泉を掘ろうと言うことになったんですよ。え、いやそんな博打って感じではなくって(笑)、昔から地熱で雪が積もらないところだったんですよ、掘れば温泉は出るだろうと学者のお墨付きは有ったんで。それでお湯が出てきて、出来たのが川を挟んだところの湯本館、うちはそこからお湯を分配してもらうことになったんです。それでその時にうちも建替えしたんですよ。

えぇ建替えにも1億円かかって、そりゃもう大変ですよ… 私たちは旅館経営なんてしたことも無いですし(笑)。料理人の方に1か月だけ来てもらって毎日料理の特訓ですよ…本当に厳しくって、そうこちらが雇い主なのにね。え、美味しいですか?それは良かったです、本当に。でも東京からどうしてまたこんな田舎に??温泉巡り?本当にありがとうございます…」

温泉も無い時代からなぜこの山奥で旅館をされてたのかを尋ねると、戦前頃までは石見と安芸広島との間を徒歩で移動する人が少なからず居たそうで、ここは峠に入る前の旅籠宿のようなものだったらしい。

この日の宿泊客は他に夫婦一組と、素泊まりの男性1名。温泉は2回は行ったが自分一人の貸切だった。お湯は何かに効きそうって感じの強いお湯ではなく、温めの長く入っていられる気持ち良いお湯。


NAKANISHI KEIICHI

旅が好き

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


コメントする