「バグダッド憂囚-商社マン獄中の608日」吉松

バグダッド憂囚―商社マン・獄中の608日
吉松 安弘
2010/3/20
NHK出版

イラン・イラク戦争中にバグダッドにプラント輸出の営業で赴任した商社マンが、赴任2か月目にして贈賄で秘密警察に拘束され、一方的な裁判で有罪判決、刑務所に収容される。
贈賄自体も現地採用のスタッフが仕組んだもの。当時のイラクでは企業に雇用の自由がなんと無く、現地採用の従業員には秘密警察が紛れ込んでいたという。

起訴前の秘密警察の拘置所、有罪確定後の刑務所の大部屋や外人房での獄中体験、拷問内容、他の囚人との会話、情報が無い中での会社(本社・現地事務所)、家族、日本大使館の釈放運動、獄中での本人との連絡が取れないことによる齟齬など、興味深い。 彼は精神状態を保つことができたから復帰できたものの、ある日いきなり、外国で刑務所に入れられてるというのは精神的肉体的に”ダメになってしまう”人もいると思う。そもそも犯罪を犯したという意識もないし、昼間に突然車に押し込められて拉致されるという荒っぽい拘束方法もすごい。さらに外部と連絡を取らせないから、家族なども何が起こったのかさっぱり分からず、行方不明扱いになるという状態。

フセイン大統領やバアス党がその後どうなったのかは周知のとおり。解放につながる交渉を行った阿部晋太郎外務大臣の子供は今は総理大臣。このアブグレイブ刑務所は湾岸戦争後にアメリカ軍が運営することになり主従が逆転する(そして米軍によるアブグレイブ刑務所における捕虜虐待で世界的に有名になる)。当時刑務所に居た人たちはその後どうなったのだろう?

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