「ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記」

ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記
ウルスラ・ベーコン/著
和田まゆ子/訳
祥伝社/2007年11月18日

ドイツで裕福な暮らしを送るユダヤ人一家。著者の父親がある日突然警察に連行された事から話が始る。

国外に行く事を条件に警察から父親を引き取り、イタリアから出航する上海行の船に乗るために、ドイツを陸路でスイスに出国。財産の国外持出が禁止されているために、持てる限りの日用品を手に持ち出発。次々とユダヤ人迫害の政策が出される中の移動。現金資産を海外に持ち出せない為に、ドイツで莫大なお金で船のチケットを買う。船の中では落ち着いた日々を過ごせたが、上海で船を下りた時点から始る過酷な生活は、読んでいてかなり興味深い。14歳の女の子が体験する様々な出来事。

当時の上海の様子の描写が、ヨーロッパ人少女の目で、飾らず書かれている。アメリカ・イギリス・ドイツ・日本・中国国民党・謎の団体など様々な権力の下で起こる様々な事件。他人事ではなく一少女に直接降りかかる災難を、父親の才覚・偶然に知り合う他の避難民・家族を世話する中国人召使(?)・ビジネスパートナー・闇組織の首領(?)・その愛人達など謎の中国人などに助けられて、又は自分の機転を利かせて乗り越えていく。

9年間の上海での亡命(無国籍になったので亡命すら出来ないのだが)生活の記録。彼女の日本人と中国人に対する描写が面白い。

部屋を借りるため、中国人の大家の部屋で賃貸契約書にサインをするのだが、その時に起こる想定外の事件(?)の箇所の描写が特に面白い。こんな事が有るのかと唸らされる。

ユダヤ人の悲劇、具体的な事件を自分の言葉で書いていて「アンネの日記」よりも興味深く読めた。

戦争が終わってから彼女はアメリカ国籍を取得し、上海で支えあった人達とアメリカで新生活を始めるのだが、このような人達がアメリカの繁栄を支えているのだと思うと、色々と考えさせられる。

著者の父親は避難民の立場で上海で事業を興す(さすがユダヤ人...)。そのおかげで家族は生き延びる事が出来たのだが、彼は上海での日々で何度か「まさかこんな事になるなら予め手を打っておいたらよかった。お金さえ予め海外の銀行に預けておけば...」と述べる。 現代の日本人がこのような境遇(無国籍になり避難民生活を送る)と言う事になる事は、可能性が全くないと言えるだろうか。また大地震が日本で起こり、大都市や原発が直接被害を受けたらもしや...と考えた。

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