「ヤノマミ」 国分拓

ヤノマミ 国分 拓
2010/3/20 NHK出版

アマゾン川上流域の深い森の中で文明前の生活を維持している原住民、ヤノマミ族の集落で数ヶ月にわたって一緒に暮らしたNHK取材班の著者の手記。テレビ番組を作る為にここまでするのかと、こんな暮らしをしている部族がまだ地球上に居るのかという驚き。

10年ほど前にNHKで大反響を得たらしいが、テレビを持たない自分は知らなかった(いや、興味を持たなかっただけか)。知人に薦められて読んだのだが、良かった。

ヤノマミについてネットで調べると、子供が産まれると母親はその子供を生かし続けるか、精霊とするか(首を絞めて殺す)を決める風習についての記事が多く見つかる。産まれたばかりの子供を母親が白アリの巣に入れるのは衝撃だが、そんな単純な話ではない。その時の彼らの無表情な顔を観ても、”文明社会”で生きる自分達では彼らを理解することは到底できない。

著者は取材後に日本に戻ってきてから体調が悪化する。食欲が無くなり、体は小さくなった。まっすぐ歩けなくなり壁に衝突する、夜尿症になった。カメラマンは子供に手をかける夢を見るようになった。 彼らはその理由を、ヤノマミの世界では「生と死」「聖も俗」「暴と愛」が混在していたが、現代社会はそれを見えにくくしている。そのタガが外れたのではないかと考えた。自分は何者でもないのに万能のように錯覚し、人間の本質が善であるかのように、現代社会では考えている。そんな常識(錯覚)が無い世界を見てしまった、のだと。

書評を見ると、テレビ番組を見た人がこの書を読み、より理解を深くしたということを書いていた。自分は逆に今は映像を見てみたい。実際に行ってこの目で見ることは出来なさそうだから。

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